【幸せとは】
SNSで流れてきた、先輩の披露宴の写真を眺める。
彼は綺麗な奥さんの隣で友人や家族に囲まれて幸せそうに笑っている。
「普通」の幸せ。「当たり前」のそれを享受することは自分にはできないな、と暗転した画面を見つめた。
【日の出】
ずっとずっと先が見えなくて、仲間が飛び立っていくのを見送り続けてきた。
次ダメだったら終わりにしよう。
そう思うたびに中途半端な希望を目の前にぶら下げられて、いつの間にか退けないところまで来てしまった。
先の見えない道を迷いながら進み続け、目前に広がるのは夢に見た景色。
きっともうすぐ、日が昇る。
【変わらないものはない】
好きだったよ、たしかに。
でもきっとふたりじゃ幸せにはなれないから。
一緒に見た桜も花火も紅葉もイルミネーションも、いつかは忘れちゃうのかな。
ばいばい、と言ったときの顔が頭から離れない。
ふたりじゃ幸せになれなかったかもしれないけど、あなたが誰かと幸せになるのも納得いかない。
初めてふたりでご飯を食べたお店で、ひとりで座っている。
周りの喧騒が嘘みたいだ。
ねえ、たしかに好きだったよ。
【イルミネーション】
「あ、イルミやってる。もうそんな季節か」
「ほんとだ、きれいだね」
あなたの方が綺麗ですよ、なんてクサい台詞は言えるはずもなく、隣でイルミネーションを見つめるあなたを見守る。瞳には七色が輝いていて、今にも吸い込まれそうだ。
手つないだら怒るかな、怒るだろうな。外じゃ手はつながないっていつも言ってるし。多分恥ずかしいだけなんだろうけど。
半ば諦めの気持ちでポケットから出した手を引っ込める。
その途端に、手がポケットから引きずり出された。
驚いている間にも指が絡められる。
「手、つないでいいんですか」
「……くっついてたら上着に隠れて見えないでしょ」
「大好きじゃん」
「悪いか」
【眠れない】
世間の常識ではないことが、残念ながら俺には常識だった。それだけ。
たったそれだけなのに、眠れないほどに考えてしまって虚しくなる。
さらさらでまっすぐな髪の毛も、少し厚い唇も、伏し目がちで照れたように笑う姿も、いちばん近くで見てきたはずなのに、ずっと届きそうで届かない。
肝心なところで勘が鈍いあなたは、きっと何も知らない。それならそれでいいんだけどね。
だけどその先を都合よく期待してるのも本当だから、どうしようもないな。
そんなくだらない考え事はまどろむ意識の中に溶けていった。