タイムマシーンに乗って、タイムパラドックスを作りたい
海の底でバーベキューをしたい。
‘85年
夏休み。学校には部活動の生徒がまばらにいるが、平日よりうんとし…んとしている。私は部室で本屋で買った雑誌をめくっていた。
別に私は真面目な部員では無い。ただ他に行くところもなく退屈に部屋で過ごすよりは、このクーラーのよく効いた部室の方が幾分かましだと思っただけだ。
オカルト研究部、それが私の属している部活だ。 UMAについて調べたり時々魔法陣を描いたりして、現に私は今宇宙人特集の雑誌を流し読みしてる。
この高校は皆が必ず何処かの部活に属さなくてはいけない。 その抜け穴といった所であり、部員はほぼ塾に行ってて部室には来ない、幽霊部員の巣窟。
部活動に真面目なのは部長、ただ1人。
夏休みの今日も来ているのは私と部長のみ。
……ーー居たぞ!!ツチノコ!!裏庭!!
けたましい声で部長が帰ってきた。 部長は常に冬服だ。どうやら宇宙人やら妖怪に会った時に肌を晒すのは危険だと思っているらしい。 この暑いのにご苦労なこった、おかげさまで冷房が他の教室より低めに設定してあるのでありがたい話ではあるが。
……ヘビの見間違いじゃ無いんですか?
……いや俺は確かに見た、腹が丸かった…
……野球ボールを飲み込んだとか……
どうせいつものように一緒に探そうとか言ってきそうで、涼しい部室の外に出るのが嫌な私はぶつくさ反論していた……。
けど、いい年してまだ幽霊とか宇宙人とか妖怪とかいろんな未確認生物とかを心の底から信じている、部長を眺めているのはつまらなくはなかった。
そんな彼と…10年以上ぶりだろうか……再会したのは。
夏の真っ盛り、ステンドグラスが綺麗な喫茶店。
仕事の商談で名刺を貰い名前を見て、……高校のオカルト研究部の記憶が走馬灯のように蘇った。
夏でもずっと学ランを着ては風紀委員会から逃げ回ってた彼は、今は白い半袖シャツを着ていた…、クールビズだろう。
ひと通り仕事の話を終え、ふと昔の話をしてみようと思った。きっと彼にも笑い話になってるに違いないと思いながら…
……そういえばオカルト研究部って覚えてます?…
……懐かしいね…君は優秀で真面目な部員だったから印象に残ってるよ……
いや別に優秀でも真面目でも無いのだが。という言葉とコーヒーを飲み込んだ。
次の一言でむせかえるまで。
……あの頃は一年中長袖を着ていたが、あれはやっぱよくなかったな。人ならざるものはこの人間界が大きくなるにつれ生きづらくなり、人間に擬態している事が多いと気づいたんだ。つまり僕が一般人に装って普通にしていた方が出会う確率が多くなるのさ。多分。数年前見かけたこの雑誌に書いてあった。
顔を近づけて声を低くして、何を言うかと思えば!あきれた。バカは死ぬまで治らんのか。そして頼んでもないのにノストラダムスの大予言の話をとうとうと語ってくれた……まるで昔と同じように。
昔のように冷ややかにツッコミをして…そして笑ってしまった。なぜか部長の変わらなさに、安心している自分が居た。
世界はめぐるましく回って変わって変化していく。毎朝新聞を読んで世界情勢にため息をついては、時々ふと、彼に会いたい な、ときまぐれで思い交換した連絡先に電話をしたりする。
……もしもし、なんか新たな発見とかありました?部長
……ようやく金が貯まったので明日からちょっと念願の全国妖怪巡りに行くんだ…無事に帰って来れるか分からん、……
……おやおや、それはそれは…なんかあったら…葬式に顔くらい出しますね…!
……は、薄情な…!死ぬつもりは無いぞ……だけどありがとな、お前も元気で!
ミステリーサークルを見るため外国に行ったが道に迷い大冒険をしたり、ナスカの地上絵を見ようと出発してなぜかスフィンクスを見て帰ってきたような方向音痴な部長が、今度は全国巡りか…と思うと多少心配でもあったが、そんな彼を見ているといつもちょっと元気が出るのである。
お題「君に会いたい」
閉ざされた日記には何が書かれてあるのか。
閉ざした理由は。
誰が閉したのか。
何もわからないまま日記はそこに置いてある
木枯らしと聞いて、思いつくものがない。風呂場で悶々と考えたが焚き火の歌くらいしか思いつかなかった。悲しいものである…