NoName

Open App
12/30/2022, 12:14:49 PM

 上半期と下半期というものは、別個体の生き物なのかもしれない。
 漠然とそう思い至ったのは、年の瀬に意味もなく風邪を引いたからだった。

 上半期は運のない自分にしては、それなりに良いものだった。華やかさこそないが、無難に幸福を積み重ねたものだ。
 薄給の中でも幾分か努力を重ねて、少ないながらも貯蓄を作る事だって出来た。少しずつ通帳に数字が積み重ねられていく様は、見ていて心躍る程だった。

 対して、下半期。あれは駄目だ。不運なんて言葉で片付けられるものではない。
 下半期の始めは今のような体調不良から始まった。運が溶け出すように鼻水が垂れ続け、止まらない頭痛が貧弱な我が身をせせら笑い、便所を住処だと勘違いした腹は己が主を苦しみ続けた。
 ──だが、それだけなら、まだ良かった。
 体調不良が治ったかと思えば、今度は流行病と来たものだ。どうやら大はずれを引いたらしい己は、死ぬかと思うほどの苦しみやら、どうしようも無い孤独と半月程も戦う羽目になった。
 そして、次は母親の持病が悪化し、父親は職場のいざこざに巻き込まれる羽目になると来たもんだ。
 ようやくそれらが落ち着いて来た頃には