「どこへ行こう」
ずっと、誰かに助けてほしかった。
今、あなた他力本願で不快だと思ったでしょ。
私を助けてくれるって信じてたの。
むしろそうでない現状が苛立たしくてさ。
やっと、現れた。救世主が。
その救世主は、優しくて頭が良かった。
なんでもできた。
でも、私を助けてはくれなかった。
私は救われんと必死になった。
躍起になって、塞ぎ込んで、立ち直って、苦しんで、結局誰も助けてくれなかった。
今になって気づく。
私はどう救われたいのかも知らなかった。
誰かに縋り、どこかへ行こうとすることは意味のないことだった。
「星のかけら」
いやね、あなたの髪が綺麗だと思って。
腰まである長い髪の毛がするん、つややと輝く。
私の髪は、うねったりはねたりして仲が悪い。
私の髪がすてきな秘密、教えてあげよっか?
私ね、星を食べたの。
空から降ってきたお星様。
岩でできた櫛も使っているわ。
あぁ、そうなの。
はねた髪が私の心をうつすみたいに、私の髪はもさもさになった。
「セーター」
手編みのセーターか、なんて考えてしまった。
思考0.1秒で平凡を悟り、自己嫌悪。
おっと、普通なのは責めるべきではない。
重い頭をもたげて見上げる空。
何かを成したいのに浪費してる今。
暖かいはずのセーターを通り抜ける風。
そんな私に、見てくれた君に、
いいことがあるといいな。
「海へ」
人が集まる。
友だちと、あるいは好きな人と遊びに
走りに
日焼けを求めて
働くために人が集まる。
ゴミが流れ着く。
ポイ捨てられた
風に飛ばされた
豪雨で押し流され、全てを飲み込んだ終着点。
想いを叫ぶ。
やり切れない想い
人前で叫ぶことすらできない苦痛
激情。
溜まりきって溢れる感情
海は全てを飲み込んだ。
「夜の海」
蒼白く光った。
ゆらゆらと引いては押すそれは、いつも見ている光景とはまるで違う、知らない世界のようだった。
これはただの赤潮。
でもいつも聞こえてくる波の音まで違って聞こえてしまう。それほどに気持ちが昂っていた。
波打ち際だけ、いつも通り。
だからちょっとだけ、その蒼色が欲しくて歩いた。
ざぶざぶざざ、歩く。
洋服が濡れる不快感。
体が強く引かれる浮遊感。高揚感。
冷たかった。
そうだこのまま死のうと思って。
何も考えずに。
何も考えないままにこれまでとこれからの全てを考えながら。
さいご、諦めきれずに諦めた