俺が好きなのは、ウェンディ、君だよ。
ティンクも、他の子も、俺が好きなのは知ってる。
だけど、君にだけは特別なんだ。
きっと君は、特別なんて言葉で表さないでって言うだろうけどね。
…わかった、決心する。
俺は決して、君をガッカリさせたりしない。
ずっと、そばにいるって誓うよ。
キスの意味だって覚えたし、女の子が喜ぶことだって覚えた。
また一緒に冒険しよう。
このネ
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「ちょ、見んなよ!お前らは早く寝ろ!」
「「はーい」」
危ない、ロストキッズ達に見つかりそうだった。
早く続きを書いて送らなきゃ。
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このネバーランドで。
秘密の恋を。
何十日もの、ネバーランドでの日記。
彼女は俺たちに大切な日記をくれたんだ。
毎日の気持ちを綴る中で、彼女は俺たちの大好きなおとぎ話を書き留めておいてくれた。
ロストキッズ達は、みんな泣き叫んで。
泣き叫んで、泣き叫んで。
泣き疲れて寝てしまった。
いつも寝る前には必ず、飲んでおいてねと
しつこいくらいに言っていた彼女の薬。
そういえば、フックが薬に毒を入れたことがあったっけ。
ティンクが飲んで、それでなんでか生き返って。
やっと彼女とゆっくり出来ると思ったら、
なんだか緊張して上手く話せなくて。
全く楽しくなかったろうな。
俺の好きの気持ちも、きっと届いてなかったんだろ。
…ん?次のページになにか貼ってある…?
そこには小さな切手と、手紙が入っていた。
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やっと見つけたの?ピーター。
あなた達きっと悲しんでると思って、あの手紙の続きを書いていたのよ。
でも、出る時間になっちゃって一緒に渡せなかったの。
だから、今、伝えたいことを書き留めておくわ。
あなたが私を好きか嫌いかは分からないけどね。
私は大好きよ、あなたのこと。
ティンクが教えてくれたの。
ピーターは口下手で、素直な気持ちを言えないから、好きって伝えられないのよって。
ティンクはもう、もっと素敵な妖精さんを見つけたらしいわ。
きっと嘘よね。
だから、あなたも同じで嘘をつくと思ったわ。
その通りだった。手紙を見つけたはずなのに、5時になっても一言も話しかけなかったんだもの。
だから、この日記に私への気持ちを書いてちょうだい。
そして、時計塔の針が12をさして、音が10回なった時。
その時に窓から投げ込んでね。
もしかしたら、またネバーランドに戻るかも…?
またね、ピーター。
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どうしよう、涙で何も見えないよ、ウェンディ。
最後なんて、なんて書いてあるんだよ…!
時計の針がなんだって…?
12をさして、音が10回?
わかったよ、わかったってば!
だから、だから…涙が止まんないんだよ…。
ウェンディのバカ…。
「ウェンディ!」
待ってくれ、待ってくれお願いだから…!
どうして行くんだよ!
なんで帰っちゃうんだよ!
母さんって言ったのが悪かったのか?
俺が全然話さないから?
それともティンクがいたから?
なんでもいいから帰ってきてよ!
帰ってきてよ…!
俺の…俺の恋人になりたいんだろ…。
そうだろ!最初から気づいてたよ!
ティンクも他の子もみんなそうだったよ!
それでやっと見つけたんだ…!
君みたいな素敵な人…。
なんで、なんでもう…こう、こう出来ないかなぁ…。
俺のバカ…俺のバカァ…!
帰り際に、あんなこと言うなよ…。
寂しくなっちゃうだろ…!
「夏にまたここに来るかもね。」
「あなたとあなた達と、夏の忘れ物を探しに」
2025/08/31
今日はピーターに別れを告げてきたのよ。
手紙と一緒にね。
お母さんが居なくなるのはとても悲しいことなのよね。
ロストキッズ達もピーターも涙を流していたわ。
でも、子供には独り立ちが必要なの。
それに、ピーターっていうお父さんもついてるから。
もうなんにも思い残すことは無いの。
だから、この日記もここに置いておく。
さようなら、私の日記さん。
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私たちの英雄ピーターパンへ
今日でこのネバーランドから帰ることにしたの。
だから、あなたとロストキッズ達のために手紙を書くことにしたわ。
マイケルとジョンも手紙を書いてくれるそうよ。
良かったわね。
それで、ピーター、あなたって好きな人いるの?
心から一緒にいたいと思える人はいる?
私はいるの。このネバーランドのどこかに。
ティンクも他の女の子達も、あなたの何かになりたいと思ってる。
でもあなたはそれをわかってないわ。
私の好きな人、知りたい?
私、もう午後の5時に出るから。
それまでにヒント聞きに来て。
次会う時までに考えといてね。
ウェンディより
2025/08/30
今日はピーターとふたりで夜空を見たわ。
とっても綺麗だった。
いつもロストキッズ達とマイケルとジョンに囲まれて、あまり二人でいれないの。
ピーターって、ロマンチックなんだけど、
女の子に慣れていないのかしら。
全く目を合わせてくれないの。
ふたりきりだっていうのに、
ティンクも連れてくるし。
あんまり会話が弾まないものだから、
昨日聞こうと思った好きな人のことも話せないし。
もしかして私の事嫌いなのかしら。
あんなに私のこと、お母さんって
慕ってくれたのに。
ただのお母さんだったのかも…。
彼にとっては、私はただのお母さんだったのね。
もうそろそろ家に帰ろうと思うわ。
ずっと恋をしていたって、
嫌われているなら仕方が無いもの。
この日記も明日までで終わることにするわ。
ピーターが私の気持ちに気づいてくれるように、
この日記は置いていく。
ここに置いておいたら、
また彼とふたりきりになれるかもしれないから。