声が枯れるまで
何かを叫んだことはあるだろうか
僕にはない
というか、生まれてこの方、
声が枯れたことがない
自分のガラガラに変化した声を
一度も聞いていないのだ
ちょっと興味があったので、
バカすぎると自覚しつつ、
頑張って枯らしてみようと思った
とりあえず防音の部屋で
大きな声を出しまくった
大声で叫んだり、
大声で好きな歌をいくつも歌ったり
なんだか謎の気持ちよさを感じたが、
すぐに精神的な疲労がのしかかってきて、
やる気をなくしてしまった
わざと声を枯らすのは難しい
そんなことを考えて諦めた翌日
喉風邪をひいた僕は、
強制的に生まれて初めての
自分のガラガラ声を聞くこととなった
うん、実際聞いてみると、
特に面白くもなんともない
というか早く治したい、つらい
何かを始めるというのは
いつもドキドキするものだ
期待に不安が混じり
最初の一歩を躊躇することもある
踏み出した先で
新しい景色を見ることができると
頭ではわかっていても
なかなか自分を動かすことができない
その一歩には勇気が必要だ
勇気さえあれば踏み出せる
そしてその一歩は一人で踏み出す必要はない
勇気を出すために力を借りられるのなら
頼ることも大事だろう
一人では見られない景色も
仲間がいれば見られるかもしれない
街を歩きながら、
様々な人たちとすれ違う
もちろん話したことはないし、
どんな人かもわからない
すれ違いながらふと思う
この人たちには、
それぞれの生活があって
それぞれのやりたいことがあって
それぞれの人生があるのだ
自分には大層なことをする力はないけれど、
この人たちがもし、
今とても不幸だとしても、
この先幸せになれるよう願う
今幸せだとしたら、
その幸せがいつまでも続くよう願う
台風のように荒れ狂う心
私はその時怒っていた
今思えばくだらないことで、
何をそんなに怒っていたのかと、
自分で自分がバカバカしい
時間をおいて考えたら、
怒るほどのことではないと思い直し、
自分も悪いところがあったと反省した
とにかく相手に謝ったら、
相手の方も謝ってきて、
お互いそれでスッキリできて、
二人の心は台風が去ったあとの秋晴れのように、
清々しい気持ちになっていた
忘れたくても忘れられないこと?
たくさんありますね
いや、忘れたいことほど、忘れられません
日々のふとした楽しいことも、
ひとつひとつ覚えていられればいいんですけどね
楽しいことというのは、
よほど目立つことでないと覚えられないです
でも、考え方を変えてみると、
忘れられない嫌な記憶の中で、
埋もれず思い出せる楽しい思い出というのは、
それだけ素晴らしい記憶ということじゃないか、
と思うわけです
忘れたくても忘れられないことには、
嫌になるほど本当に困らされるけど、
それに負けない輝く思い出を、
これからもたくさん作っていきたい
そう思います