傘を差しながら、一人雨に佇む
バスが来るまで、まだしばらくかかる
あいにく誰かと一緒なわけではないから
会話をするでもなく、ただ待つ時間が続く
沈黙の中、雨の降る音だけが聞こえる
少し強めの雨だから、すぐ止むこともないだろう
普段なら嫌なはずの雨だけど
じっくり聴くと、この雨の音がなかなか心地いい
こんなに集中して雨の音を聴いたことはなかった
今まで気にもしなかった音
けれど、意識して聴いてみると、いい音だと感じる
自分が雨の音を好きだなんて思いもしなかった
バスはまだ来ない
今はこの音を楽しんでいよう
私の日記帳は
明日からのページは空白だ
すでに色々なことが書かれている
今日までのページとは違って
それらのページには何も書かれていない
明日はまだ来ていないのだから当然だ
未来のことは誰にもわからない
それはつまり
たくさんの可能性に満ちているということ
明日はどんなことを体験できるのか
このページにどんな文が書かれるのか
どんな可能性が選び取られるのか
心を踊らせながら私は眠る
向かい合わせに座る二人
その目にはお互いしか映っていない
この空間は二人だけの世界
誰も割り込むことはできない
しかし二人の間にある空気は
安らぎや穏やかさなどとは程遠い
二人の間で火花が散りそうな激しさを感じる
二人は真剣勝負の真っ只中
即座に戦況を見極め
休むことなく鈍ることなく
素早い動きでカードを場に出していく
それを観る周囲は
その動きが目にも止まらぬスピードに見えるが
二人には一秒一秒がとても長く感じていた
勝負は互角
ただのトランプ遊びのはずだが
二人は遊びにこそ真剣だった
楽しむことにこそ真剣だった
同じ実力
同じ価値観を持つ二人は
最大の友として
最大のライバルとして
全力でぶつかるのだ
様々な悪いことが重なって
前を向けず鬱々としていた
やるせない気持ちに包まれた私は
心が箱の中に閉じこもってしまったかのようだ
鎖が何重にも箱を縛り付け
外からも中からも容易には開けることができない
こんな気持がいつまで続くのか
そんなことを考えていたら
君は容易く鎖を引きちぎり
私の心を箱の中から優しく引っ張り出した
暗いままだった心は
箱の外で光を浴び
いつの間にか気持ちは明るくなっていた
君のおかげで
もう一度前を向くことができた
心へそそがれる光を感じながら
私は一歩一歩進んでいく
航海は始まった
我々は海へ出たのだ
狭い世界から我々は解き放たれた
我々は何も知らなかった
知らないことすら知らなかった
だが知らないということをようやく知った
だから知らないことを知るために
広い海へと出た
この航海はどこまでも続く
終わることはない
知らないことを知り尽くすことはできないからだ
しかし知ろうとし
知り続けることが大切なのだろう
我々は航海をやめることはない
我々は広い海で
知ることを追い続けるだろう