【心のざわめき】

あの人が
私の知らない誰かに笑う声も
あの人が
私の知らない誰かの話をする時も
心がざわめく

あの人が
私の恋人にならないことを知っていても
それでも望んでしまう

心は際限がない
求めるほど傷が増えると知っていて
私は望む

痛みのある恋だ

せめて
心のざわめきすら愛せたらいいのに

【芽吹きのとき】


私は君を見つめていた

そのとき
木々は生い茂り
花々は咲いていた

いずれ
散ることを知りながら
それでも
私は君を見つめていた

そよそよと音を立てて
私と君は花のように
咲いては漂う

またいつか花咲く頃に
君と出会うことを願いながら
ただ、揺られていた

【あの日の温もり】


あの日
手を取って
秋の道を歩いた

季節の移ろいを
体いっぱいに感じていた

ただ
一緒に居てくれるだけで
それだけで良かった

元気で居てくれれば
それだけで良かった

胸を打つ
この痛みと
温かさが滲む

今も君との日々が
私の心に息づく

やがて春は訪れて
新しい命が芽吹く

あの日、鶯は
夕陽に向かって
飛び立った

今でも
あの夕暮れのオレンジ色が
瞼の裏に染まっている

【cute!】


笑った時に見える八重歯
頬に宿る桜色
細く柔らかい髪
ふわりと揺れるまつ毛
ケラケラも笑う心地の良い声

「私なんて可愛くない」
と君は言う

だけど私の目には
『可愛い』のすべてが宿っている

ー記録ー

夕暮れ時に
二人の影が伸びていくのを
見つめていた

木々が枯れ
今かと待ち侘びながら
蕾を膨らませて待っている

冷たかった風が
いつからか春の風に変わり
髪を靡いている

そんな
日々の美しい光景を
この目に焼き付けていたい