【白ペン】
同棲中の彼女と喧嘩した。
彼女のお菓子を自分が買ったものだと勘違いして食べてしまった事が原因だった。
慌てて買い直してきたが、相当楽しみにしてたらしく、彼女は自室に籠ってしまった...
私は肩を落とし、買ったお菓子を彼女の部屋のドアノブに掛け、自室に向かう。
しばらくベッドでうずくまっていると、「シュッ」という音が微かに聞こえ、体を起こして自室の扉に目を向ける。
ドアと床の隙間から入れたようで、一枚の紙が床に置いてあった。
手紙を拾って最初に見えたのは
『わたし、あのお菓子とっても楽しみにしてたの。
なのに、食べちゃうなんて酷いわ』
という一文。
これだけを伝えるためにわざわざ...と思いながら、手紙を持ったまま再度ベッドに寝転んだ。
そしたら最初に見えた文章の下に何かが書かれているように見えた。
なんだろうと体を起こし、なんとなくマジックペンで紙の何も書かれていない部分を塗り潰してみた。
すると、白いペンで書き隠されてたであろう文章が浮かび上がった。
読んでから、私は自室を出てリビングに向かう
リビングでは、彼女が私が買ったお菓子とココアを2人分入れて待っててくれた。
『でも、お菓子買い直してくれてありがとう。
謝ってくれたのにいいよのひとつ言えなくてごめん
一緒にお菓子食べよう?リビングで待ってるね』
お題「隠された手紙」完
【それぐらいの関係】
喫茶店で彼女と出会って3年目の事だ。
別に付き合ってるわけじゃない、俺が喫茶店に通ってるうちに入ってきたバイトの子で、仕事中に少しばかり世間話をするくらいの関係だった。
海が見えるカウンター席に着き、コーヒーとサンドイッチを注文してしばらく待つと、彼女が席まで届けに来て少しばかり話をする。
彼女は大学生らしく、大学の愚痴や趣味について少し話し、満足そうに笑って手を振って裏方へと戻っていく。
それぐらいの関係だった。
そんなある日、いつものようにコーヒーとサンドイッチを注文し、彼女が俺の席まで届けにくる。
「私、バイトやめるの」
理由は第一希望の会社に受かったからだと。
「見ず知らずの私の話を聞いてくれてありがとう」
そう言って彼女は手を振って裏方へ戻っていく。
「バイバイ、また会いましょう」
と台詞を追加で残して。
彼女の言う通り、次の日からコーヒーとサンドイッチを頼んでも彼女は届けに来なかった。
たった3年毎日少しずつ話してた彼女の話。
お題「バイバイ」完