「大好きな君に」
『大好きな君に愛を伝えよう。』
そんなポスターを、街中で見つけた。
だから僕も君に愛を伝えようと決めた。
だからプレゼントのネックレスを買った。
喜んでくれるかなあ。そう考えながら家に帰る。
「ただいま!」
「おかえり!」
「ご飯先食べる?」と聞かれ、「ちょっと待った!」
と答える。僕が深呼吸している内に彼女は言う。
「好きだよ」
そう言われてプレゼントのお花まで貰ってしまった。
彼女に先手を打たれた。
少し悔しい。
けど君と僕はずっと一緒にいられるの方とも思った。
君の笑顔を見て本当に君に勝つことはできないのだなあと痛感した。
続けて僕も「好きだよ」と言い、
「ネックレスしてメイクをしあって2人でディナーに
行きましょう?」
と君を誘った。
この小さな世界のものさしで測れば僕たちは
変わっているけれど僕の中の大きな世界で見たら
君はただの大好きな人だ。
今、大好きな君と一緒にいられることが幸せだ。
「今日の心模様」
今日の私の心は何もかもしたくない時に出る
灰色の空である。
というのも今日は失敗してはいけないと
いうわけではないのだが大切な試合がある。
私は得意な訳では無いからきっと足を引っ張ってしまうだろう。
どうせみんな、本気を出す訳では無いのだから。
得意な子にすべてを託してしまおう。
もういいや、と思う。
なんて無責任な人なのだろうと思ったろうか?
まあ、そう思われてもいいのだ。
そう思われてもいいと思っているけど私の心は
灰色だ。
どうも手の抜けない性分なのだろう。
まあ、やらなくて良いと言われたらやらないが。
そんなどっちつかずな人間なのだ。
私という人は。
「たった1つの希望」
私ならみんなの幸せを願うだろう。
決して叶うことの願いだけれど
叶うかもと思えるから希望なのだ。
そんなことを考えながら今日もベッドに潜り込む。
希望とは叶わないから希望なのであり、
叶ってしまったら何も価値なんてなくなってしまう。
そんなものであるのかもしれない。
叶うはずのないことを願ってしまう私たちは
楽天的であり、今を諦めてしまっているのかも
しれない。
今の私にはよくわからないけど。
少なくとも誰かには幸せでいてほしい。
「欲望」
有名になりたい、お金持ちになりたい。
欲望といえば色々とあるが彼女の場合は
「そんなものじゃないよ。あなたがいればいい。
あなたがずっといてくれれば
私はどうなったっていいの。」
と毎日のように言う。
「重いよね。ごめん。」と彼女は控えめに笑った。
しかしそれを聞いて僕は少し心配になった。
もちろん僕も彼女のことは大好きだ。
そして、むしろ少し君に必要とされることが嬉しい。
しかし僕には別の問題がある。
つまり僕の欲望は彼女とはちがうのだ。
僕の欲望とは、彼女より先にいなくなることだ。
もちろん彼女をのこすのは心配だけれど、
何よりも僕が先に彼女がいなくなることを
直視できないのだ。
彼女の悲しい顔も見たくないし、寂しいのも嫌だ。
ああ、どちらも解決できる方法があるのならば
いいのに。
「遠くの街へ」
僕は二股をしている。
「遠くの街へ行こう。
2人で誰も知らないような街に。」
そう、2人の彼女に告げた。
街に行く準備ができたら同じ待ち合わせ場所に
来てくれ、と伝え。
そう、2人の彼女にだ。
僕には2人の同じくらい大好きな彼女がいる。
1人に愛想が尽きて1人に愛を注いでいる訳では無い。
2人とも僕のことが好きだし僕も2人のことが好きだ。
彼女達は彼氏が同じだし好きなブランドも一緒。
会わせたらきっと気が合うだろう…そう踏んだのだ。
そして僕の予想通り彼女はもう1人の彼女と
仲良さそうに談笑している。
2人が仲良くなったら僕と3人でお似合いのカップルに
なれるとふんでいたのだ。しかし
現実そう甘くはない。
僕は浮気がバレ、2人の彼女に振られた。
そして2人の彼女が恋人同士になってしまった。
「えっ?」
まったく予想もしていなかった展開だった。
だけど大好きな2人の幸せそうな顔を見て、僕は決めた。
「遠くの街へ行こう。
2人が誰も知らないような街に。」