素敵なペンにオシャレなノート。例えばノートならロルバーンとか。ペンなんて山のような種類がある。自分にピッタリな文房具に巡り会える確率はどのぐらいか。
左利きだとその確率はぐっと下がる。
まず、左手で書いて駄目にならないペンを探すところからだ。万年筆なんて以ての外。ボールペンならサラサが安パイだってよく言われる。リングノートを使いたいなら、ソフトリングのノートならストレスがなくていいだろう。
でもそれじゃあ出会いがなくってつまらないじゃないか。
万年筆だって左利き用なら使えるし、使ったことのないボールペンにチャレンジしてみるのもいいじゃないか。リングノートのリングが邪魔になるのは、右利きでも変わらない。
ちょっと手を伸ばしてみたら、案外巡り会いがあるかもしれないんだから。
あの流れる雲にもう一度出会う確率はどんなものだろうか。何千万分の一、あるいは何千億分の一かも知れない。
そもそも、科学的に考えれば東へ東へ流れるから、再会なんて出来やしないのだけれど。
もし、もう一度出会えたなら。
それは奇跡と呼べるのではないだろうか。
──誰は彼と書いて「たはかれ」。あるいは彼は誰と書いて「かはたれ」。誰そ彼と書いて「たそかれ」。そこに立ってる人の顔が見えなくなってくる時間。
大学の先輩の声が不意に蘇った。18時も過ぎて、暗くなってきてもいい時間だが、見渡せばあちこち電気が点いていて、ちっとも暗くなんてなかった。
青く暗くなり始めた空を見上げてたって、一番星も見えやしない。いつだか光害だと騒がれていたのだったか。
(そこに立ってる人の顔が見えなくなってくる時間)
ちょっと想像が難しいかもしれないけれど、例えば、そこですれ違う人の顔すら見えないと想像してみる。
……それはホラーかも知れない。
(あるいは彼は誰と書いて「かはたれ」)
成る程、言葉とは奥が深い。
にわの シャベルが いちにち ぬれて……。
お天気雨がベランダの手すりを叩いている。気紛れにつけたラジオから流れる曲に、ペンを動かしていた手を止めた。
懐かしい曲だ。どこで聞いたんだっけ。
思い出している間に、曲は盛り上がっていく。
「きっと明日もいい天気」
聞いたことのあるサビ、思わず口ずさんでしまう。
手すりの鳴る音が止んだ。明日も天気かな。
静かな部屋だ。
窓から覗く月明かりのカーテンが、部屋の真ん中に置かれたピアノを照らす。それはまるで前の主を偲んでいるようだった。
気紛れに鍵盤に指を落としてみる。
音楽の知識のない自分では、寂しい音を響かせる事しかできない。