南葉ろく

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8/19/2024, 12:03:17 PM

 日常はわたしを待たない。時間はいつでもわたしを置いていく。流れはいつだってあまりにも早いから、躓きそうなわたしは今日も、怠惰な足を懸命に動かしながら生きている。
 うつくしいものを見たいと願いながら、無機物で無感情なものを、無感情なひとみで、今日も。
 感情をうつしとったように、どうやらずいぶん空は涙を落としたようで。くたびれた心持ちで、地面を見た。たっぷりの水たまりが眼前に広がっている。空はもう泣いていないようだけど、どうやらたくさん溜め込んでいたらしい。そういえば、最後に泣いたのはいつだったか。
 水たまりは灰色がかっている。空を見る。灰色だなあ、と思った。
 青に薄い、薄い、とても薄い墨を溶かし込んだような空色。
 うつくしい青空とは呼べないのだろう。けれど。青空はちょっと、いまのわたしには眩しすぎるので。
 いまのわたしには、これが、きっとうつくしい空なのだ。




テーマ「空模様」