少女N

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11/28/2024, 10:10:27 AM


『終わらせないで』

11/27/2024, 10:53:32 AM


愛情とはなんだろう。

頬のズキズキとした熱さとそれを凍らせてしまうかのような冷たい風を感じながら考える。

誰かが、愛とは自己犠牲だと言った。
誰かが、愛とは見返りを求めないことだと言った。

私は、父のために体を売った。
私は、母のために拳を頬に受けた。
だけど、私は2人に何も求めなかった。
つまり、私は両親を愛しているということだろうか。

チラリと氷のような檻の外へと視線を向けて、下を眺める。
暖かな光に照らされた街は、愛が溢れていた。
小さな子供がはしゃぎ走って、母親がそれを微笑みながらも注意し、父親はそんな二人を眺めている。

子供がふいに、車道に出た。
大きな音とともに、眩い光が子供の目の前にせまる。
その刹那、父親が子供を抱えて暖かな光の元へと転げる。
子供は大泣きし、父親はそれを宥め、母親は泣きながらも二人に駆け寄った。

あの父親は、子供のために身をていした。
あの母親は、子供のために涙を流した。
だけど彼らは、子供に何も求めてないのだろう。
正真正銘、彼らは子供を愛していた。
大きな声で泣くことができるあの子は、愛されていることを知っているから、きっと両親を迷いもなく愛していくのだ。

不意に頬にぬるいものが伝う。

父は、私に男を教えてくれた。
母は、私を信じて首を絞めてくれた。

誰かが、愛とは与えることであると言った。
誰かが、愛とは信頼であると言った。

頬のそれをそのままに、檻に手をかける。
唯一残っていた温もりが手から離れていく。

見下ろす先には様々な愛の形。

嫌がる私を押し倒して花を握りつぶした父も、涙も出ない私に死にやしないと笑いながら手をかけた母も。
私を愛していたとでもいうのだろうか。
これも愛の形のひとつとでもいうのだろうか。

父が私の手首を抑えた時のように、母が私の首を絞めた時のように、檻を握る手に力を込め、足を地面から離す。

両親の愛が詰まりに詰まった体が思ったよりも簡単に持ち上がる。
両親が育てた私の細い腕は、ぷるぷると震えていた。
両親の愛を見つめ続けた瞳をゆっくりと瞼の裏へと隠す。
思い浮かぶのは二人の会話。

『あんなやつ、いなくなればいいのに。』

もう一度、ゆっくりと瞼を開く。

愛とは、自己犠牲である。
愛とは、見返りを求めないことである。
愛とは、与えることである。
愛とは、信頼である。

私は、二人のために自分を犠牲にして、それでも何も求めずに、ただ、 "私という存在の消失"を与え、これで彼らが喜ぶと信じている。

久々に頬を流れたぬるいそれは、もう乾いてしまっていた。
愛情で重くなった体が、暖かな光へと吸い寄せられる。



あぁ、幸せだった。
私は愛されていたのだから。



『愛情』

11/22/2024, 2:20:07 AM

『どうすればいいの?』

6/29/2024, 12:42:49 PM




あの入道雲はいつ消えてしまうのだろう。

そんな感覚で雲を見るようになったのは、最近のこと。
朝会話する母親。
散歩道で出会うおじいさん。
そして、見上げた空にあった入道雲。
全部全部、いつかはいなくなってしまうのだと思い、心がきゅうと泣く。

小さい頃から分かっていたはずだった。
昨日までお話していたひぃじいちゃんのお葬式に参加したこともあるし、仲良くしていた友達の名前を新聞で見かけたこともあった。

幼稚園児の癖に、大人ぶって読んでいた新聞で「また遊ぼう」と約束をして手を振りあった友達の名前を見つけてしまった時。
たくさんの鶴を折って、その子の写真の前に置いた時。
その頃は、「死んでしまう」ということが分からなかったから、涙も出なかったけれど。

小学生になってから、可愛がっていたハムスターが冷たくなって動かなくなったのを見て、初めて「死ぬ」ということを理解した。

理解してしまった。

「死ぬ」のは悲しいことなんだと。

それからほんの少しだけ「死」が怖くなった。

でも、その時の私は「自分もいつか死んでしまうんだ」と受け入れることができた。

「死」を実感したことなどなかったから。



途中



『入道雲』

6/7/2024, 9:17:51 AM


「さいあく〜!」

隣の彼はそうやって、頭を掻きむしっていた。
大きな声で叫んだその子にみな目を向ける。

「おいおい、今日は何が"さいあく"だってんだ?」

他の子がいつものように尋ねると、彼は待ってましたといわんばかりに口を開いた。

「今回のさいあくは〜...じゃん!!体操服を忘れたこと!!」

そう自慢げに自分の最悪を発表した彼に、まわりはどっと盛り上がる。

「よっしゃ!俺の勝ちだな!」

「くそ!今回こそ消しゴム落とすと思ったのに!!」

「それ"さいあく"なのか?」

給食のプリンが賭けられた彼の____"最悪"くんの"さいあく"当てゲームで勝者がガッツポーズを決めている。
最悪くん、というのはもちろんあだ名である。
彼は入学当初からこの"さいあく"発表をしており、最初はみんな戸惑っていたが、いつのまにかこうしたゲームにまで発展していた。

最悪くんは、盛り上がっている様子をみて楽しそうに笑っている。
彼がなぜこんなことを始めたのかは分からない。
もしかすると、小学生の頃からやっていたのかもしれないが、彼は中学入学を機にこちらに引っ越してきたそうなので、それを知っている人は多分いない。
"多分"とつけたのは、私が彼とあまり接点がないから知らないだけ、という可能性もあるからだ。

話覚えてない...

"さいあく"当てゲームは、


途中




『最悪』

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