川原

Open App
5/31/2024, 2:05:50 PM

「無垢」

ぷにぷにほっぺにツヤツヤおでこ
手首と曲げた肘に出来る皺
ほわほわの産毛
そして 見るもの全てに
好奇心を発動させていた
何もかもが楽しくて

あの子の瞳は
いつから曇りがちになったのだろう

自分で積み上げた積み木を
自分で崩して行くループを
見ている事しかできない
わたしとて
俯いて歩く為に歩き方を覚えた訳じゃない

そのうちにうんと年を取って
歩けなくなって 
お座りしながら
ホワホワの生え際で
頭の中もシンプルになって
心も無垢に
還って行くのだろうか


5/30/2024, 10:20:07 AM

「終わりなき旅」

時々 こんな旅はもう終わりにしたいと思って
背中の荷物を下ろしたくなるの

頭の中では何度も 何度も
床にリュックを叩きつけてる

泣いて泣いて泣きながら
飛び出た思い出を拾っては
またリュックに戻して
じっとうずくまる

もういいよ
誰だよシャツの裾を引っ張っているのは

いつかの小さい指で
あたたかい手のひらで
くすぐらないでおくれよ

また立ち上がって
歩きたくなってしまうじゃないか

5/28/2024, 11:09:00 AM

「半袖」

日焼け止めを塗っていたのにな
昨日はすっかり 初夏の日差しだった
普段はほとんど屋内だから
ちょっと日焼けするくらいで丁度良いんだけどね

さあ ストローハットの
準備は宜しいか お嬢さん達

半袖からのぞく腕を並べて
こんがり具合を確かめたら
あの日失くした夏を取り戻しに行こう










5/26/2024, 11:10:01 AM

「月に願いを」

ついつい 
月に長居をしてしまった
そろそろ帰還せねば
レバーを戻して 背筋を伸ばす

窓の外には本物の新月
真実の私は 何を願おう
哀しみばかりのこの地上で
生身の頼りなさで


5/25/2024, 11:11:54 AM

「降り止まない雨」

巨大な石仏が横たわる小道を
傘をさして降りる
もとはテーマパークのアトラクションだったらしい

故郷の町は
いつも陽が降り注いでいたが
此処に来てからは傘をさしてばかりだ

あの人に 昔聞いたのだ
雨ばかり降っている町に住んでいたと
此処は晴れの日ばかりで良いなと
言っていたのに

尤も 何か約束を交わしていた訳でもない
勝手に私が行方を探しているだけ

子供の頃に隠れ家にしていたと
誰も知らない抜け道があると
たまに話していた 
巨大な石仏の
右の手のひらの辺り 

有刺鉄線を乗り越えて傘を閉じる
扉の開け方も 丁寧に教えてくれていた
まるで私が追いかけて来るのが
わかっていたかのように

今度は私が 手を貸す番だ




Next