「カラフル」
明け方 うつくしい 鳥を見た
つやつやとしたクチバシが
一輪 花を咥えていた
うつくしい鳥に似合いの艶やかな花は
たった今
この世に与えられたばかりのような色をして
微かに運ばれて行った
「楽園」
もしも楽園行きの切符があれば
貴方は買いますか
さあ どうでしょう
そこに行けば 幸せになれるのでしょうか
少なくとも今よりは
悩みも飢えもないのだから
争いも病気もないのだから
でもお高いんでしょう その切符は
さあ どうでしょう
楽園には通貨は無さそうだから
片道分に全財産を溶かせば良いのでは
なんだかんだいって
私はこの稼業が気に入っているのかな
此処にも時おり 自由な風は吹くものでね
そう言いながら
貧乏神は
午後のお茶を淹れた
茶柱が立っているなと
死神は思った
「風に乗って」
初夏の匂いが
お前はどうしたいのかと
問いかけてくる
どうもこうも
どうしたもんだか
答えは保留
皆 旅立ちました
お前を置いて
一人で地を這う 覚悟を決めるか
翼を取り戻し
あの頂きに帰るのか
風に乗って
答えは保留
石段に腰をおろし
花弁の散り際をを眺めている
「刹那」
刹那
自分も含めてその言葉を
実際の会話で使っているのは聞いた事がない
だけど小説ではよく見る言葉だ
あとは何があるかな
憧憬 とか
道行 とか
旅情 とかかな
紙の上で踊る美しい言葉たちを
舌の上で転がして
たまには使ってみるのも悪くない
そんな事を言い合える貴方が
今 此処に居たらいいのに
刹那の願いが 叶えられたらいいのに
「生きる意味」
そんな事を考えるのは
おそらく地球上では人間だけで
意味を 考えてしまうから苦しい
争いや災害や 事故や病で
失ってしまった 命は皆 等しく尊い
愛する人を 次々に見送って
後悔するばかりのわたしに
命の意味など 聞かないでください
だけど例えば
春が巡れば咲く桜
山椒の枝に止まるアゲハ蝶
真夏の熟れたトマト
雪の下の青菜葉
ただそこに居て
天を見上げて
ただ 今日を営む