ずっと空白の席に、木漏れ日が差してた。
机に反射する水玉模様みたいな光は、葉っぱの揺れに合わせてゆらゆらとしている。
音もないその光景が綺麗で、暖かくて、なんだか目の奥がじんわりとした。
「待ってるんだよ、ずっと」
机をさらりと撫でて零した言葉は、誰の耳にも届くことなく机に落ちた。
プリン食べた!!!
めちゃ美味しいやつ!!!
special day!!!!
風鈴の音。
その音を聞くと、あのひと夏のことを思い出す。
親に連れられて行った祖父母の家。
縁側に走り込んできた輝く瞳の少年。
手を引かれて誰にも言わずに家を抜け出した。
彼は私に色んなものを見せてくれた。
誰にも教えていない抜け道、
パッと見では分からない秘密基地、
綺麗な花畑、
輝くシーグラス。
「…音は記憶を引き出すよね…」
あの日家に戻った私は、両親祖父母に大いに心配され大いに怒られた。
…彼のことは、誰にも言わなかった。
あの日からもう何年も経って、大人になって、彼の顔も声も朧気になった。
けれど、あの瞳だけがいつまでも記憶に焼き付いていて。
…そう、そんな瞳。
「…○○ちゃん?」
風鈴の音、記憶だけじゃなくてあなたも呼んだのね。
昨日の私はいなくなった。
今日の私は違う私。
そう思いながらでないと、私は私に飲み込まれてしまうから。
ススキ、実家の近所の空き地にわさわさ生えてた。
十五夜の時期になると、おばあちゃんが作ったおはぎと共に月の前に供えられてた。
そういう情景が、何年経った今でも割と鮮明に思い出せる。
ススキと聞くと、「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」という句を思い出す。これもまた、私の記憶にひっそりと佇むものだ。
ススキに花言葉ってあるんかと思って調べた。
ちゃんとあったし、良い意味だった。
活力とか、生命力とかがあるらしい。
確かに生命力はめっちゃあると思う。
じゃなきゃ人の手が加わらない空き地であんなに繁栄できない。
ススキだけでこの一連の流れを辿った。
久しぶりにこのアプリを開いてみたけど、私の記憶の扉も開かれましたね。知識も増えて万々歳。
サンクススキ✌️