茶々

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1/31/2024, 1:56:46 PM

『旅路の果てに』

…どのくらい遠くに来ただろう。
いくつもの月が頭上を通って過ぎていった。
何もかもから逃げ出したくて、
無我夢中で歩き続けた。
お気に入りの鞄に
ポチ袋に入ったままの貰ったばかりのお年玉と、
ため続けていた貯金を財布に入れて、
スマホと充電器も入れて、
折り畳み傘と、
唯一好きになれた数学の教科書をいれて。
長袖と長ズボンとアウターを着て
親も親友も友人も先生も近所の人も誰にも見つからずに
18年間住み続けた街を抜け出した。

……筈だったのに。
「あ、見つけた。ここに来ると思ったよ。」

アイツはいつも、私の行く先にいる。
親でも親友でも友人でも先生でも近所の人でも
なんでもないのに。
アイツはいつも、私の心を見透かしてくる。

「ねぇ、何処に行こうか。
    誰にも見つからない場所を探そうよ」

そう言って、私の心に上がり込んでくるのに
いつもいつも、コイツだけは許してしまうんだ。

11/1/2023, 10:42:43 AM

『永遠に』

永遠なんて、存在しない。
だから、君が僕を愛してくれているうちに
君が僕だけを見ているうちに、
愛を永遠にしてあげる。

10/24/2023, 12:08:49 PM

『行かないで』
僕より先に産まれたあなたへ
こんな田舎から出ていきたいんでしょう?
僕も連れてってよ。
まだまだ高校生で、できることは少ないけど。
あなたと離れたら僕は
何もできなくなっちゃうから。
ねえ、都会になんて行かないでよ。

10/14/2023, 12:30:49 AM

『子供のように』

私立日賀志高校、七人しかいない演劇部の一年生。

あぁ、今日はここで上演するんだ。
観客席のドアを開けて、降りている緞帳を見た。

ワクワクした。
緊張した。

だけど、自分にできることをやりきりたかった。
今まで何度も何度も重ねてきた練習。
先輩から貰ったアドバイス。
きっちり全て受け止めることはできなかった。
だけど、今の自分に表現できることを。
人物を生かす。
台詞がないときでも動く。
客の目は惹かずとも、「私」は生きているから。
紙の上の存在ではないことを
今日、証明する。

9/10/2023, 12:57:49 PM

『喪失感』

私は、彼が嫌いだった。
ある日告白されて、付き合った。
その時は、好きだった。
けど、段々と嫌になっていった。
嫌なところが目につくようになった。
だから、私の方から、一方的に振った。
それなのに。
なんでかな。
どうして。
どこからか溢れてくるこの雨粒は、
とめどなく落ちてくるんだろう。

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