Aria40

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『旅路の果てに』

…どのくらい遠くに来ただろう。
いくつもの月が頭上を通って過ぎていった。
何もかもから逃げ出したくて、
無我夢中で歩き続けた。
お気に入りの鞄に
ポチ袋に入ったままの貰ったばかりのお年玉と、
ため続けていた貯金を財布に入れて、
スマホと充電器も入れて、
折り畳み傘と、
唯一好きになれた数学の教科書をいれて。
長袖と長ズボンとアウターを着て
親も親友も友人も先生も近所の人も誰にも見つからずに
18年間住み続けた街を抜け出した。

……筈だったのに。
「あ、見つけた。ここに来ると思ったよ。」

アイツはいつも、私の行く先にいる。
親でも親友でも友人でも先生でも近所の人でも
なんでもないのに。
アイツはいつも、私の心を見透かしてくる。

「ねぇ、何処に行こうか。
    誰にも見つからない場所を探そうよ」

そう言って、私の心に上がり込んでくるのに
いつもいつも、コイツだけは許してしまうんだ。

1/31/2024, 1:56:46 PM