ある者は「平穏などつまらない」と言う。
──私の人生に相応しいのは、誰も彼も虜になる、絢爛で刺激的な晴れ舞台だけ! 平穏な毎日なんかに構ってるほど、暇じゃないのよ。
またある者は、「考えが変わった」と言う。
──俺はなんでも、とにかくスリルがあった方が楽しいって思ってたけど、今は違うかな。だって平穏な時間も持っとかないと、あの子に会いにいけないからね。
「平穏には代償がある」と言う者もいる。
──平穏はもちろん結構なこったが、こっちだってそのために苦労してんだぜ? 悪かないが、タダで永遠に手に入るモンでもねーんだよ。
もちろん、平穏を好み、そんな日常を愛する者もいる。
──俺はなるべく、平穏の中で生きてたいよ。「じゃあ厄介事ばかり引き受けるの止めたら?」って、言われりゃその通りなんだけど……だって、俺だけじゃなくてみんなにも、平穏があったらいいなって思わないか?
望む者も望まざる者も、平穏を手にするのはかくも難しいようである。
お題:平穏な日常
愛がもたらすのは争いか平和か。二者択一かのような問いだが、俺はどちらも正しいと思う。根拠ならある。俺が体現してる。
俺は愛してもらえたから争わずに生きられるようになった。だがもらった愛を返そうとすればするほど、俺の行いは争いに向かった。
俺は所謂"問題児"だった。父として慕う兄貴分に、俺はおかしいのかと尋ねたこともある。彼は、「お前はおかしくなんてないよ。ただちょっと不器用なだけだ」と、俺の頭を撫でて笑った。
誰もが彼を愛するし、彼も人を愛している。彼が授ける愛は争いを生まない。俺とは違う。
……そうか、そうだな。争いも平和も、愛のせいにしてしまうのは無責任だな。
お題:愛と平和
過去を悔やんだって仕方ない。
うるさい、悔やむくらい良いだろう、好きにさせておくれよ。
どうしようもないことくらい分かってる、馬鹿じゃないんだから。でも悔やまずにはいられないことくらい、馬鹿じゃないなら分かっておくれ。
お題:過ぎ去った日々
精々「命」じゃないだろうか。金より大切なものなんて。
お金が大好き。そんなことは全員同じで、違うのはそのためにどこまでやれるかだ。俺は金のため、命以外のコストならいくらでも差し出すことができる。金を手に入れることも、金を使うこともこの上なく好きだからだ。その快感を得るためなら、俺は如何なるリスクも労力も喜んで支払おう。
──が、そう考える人間は少ないらしい。金を前にして尚、倫理や道徳を捨て置けない者もいれば、逆に大金に目をくらませ、平気で危ない橋を渡る者もいる。俺にはどちらも理解し難い。
命が無ければ、金を手に入れることも使うこともできない。だから己が命だけは、金よりも大切であると認めてやろう。
お題:お金より大事なもの
月が綺麗ですね、なんて、言ったらあっという間に顔が火照ってしまいそうなセリフ、囁いたことはないけれど。
仮にそんなセリフを吐いたなら、察した貴方はどんな反応をするんだろう。「俺も」って微笑む? 分からないふりで首を傾げる? それとも、貴方も照れちゃって二人して黙り込む? 試してみたいなぁ。
そんなことを考えちゃうくらいには、今夜は立派な満月。珍しく子供たちも寝静まっていて、お月見するには絶好の夜。
ベランダに出ればもっとよく見えるのだろうけれど、冷えてしまうし窓は閉めたまま、ガラス越しのお月様も十分綺麗。
ぼんやり外を眺めていると、聞き慣れた声と足音が耳に届いた。「どうしたの」って、微笑む貴方が隣に座る。
「うーん…空を見てたの。ほら見て、お月様、綺麗だね」
お題:月夜