「♪エンジョーイ!!」
これは友人のカラオケ十八番曲。
「♪Dance Dance Dance Ready Go!!」
音楽は好きだけど、
耳で聞いて覚えるのが得意ではないので、
聞いた音を喉で再現しないといけないのは苦手。
聴いた曲をそのまま再現する事に長けている友人といると
更に苦手意識が芽生える。
「ここはこうじゃない?」
なんて音程を直されるたびにちょっぴり凹む。
楽器演奏の方が好きなのはもしかして音が固定されてるからか、なんて捻くれた考えが顔を出す。
バタバタと出かける準備の音がする。
「会社行かなきゃいけなくなった」
完全リモートワークになっていた夫はそう言って会社に出かけた。
子供は学校。
洗濯も掃除も一通り終わっている。
一人ならお昼は作らなくて良いか、と
お菓子と飲み物を用意する。
本か… はたまた映画か…
気になっているゲームの実況でもいいかもな…
などと考えながらソファに座り込む。
不意に訪れた束の間のお一人タイムを
のんびり静かに楽しむのでした。
子供がスティックパンを食べたいと言う。
一本そのまま渡すのはまだ危ないかなと一口大に千切ってお皿に置いた。
一つ食べる度にもう一つ。
何回目かの飲み込む仕草をした後、
子供の顔がじわじわと赤くなっていった。
名前を呼んでもこちらを見ない。
口の中には何も見えない。
焦って背後から抱え、ぐっと引き上げた。
ぽっ…という気配と共に口の中で圧縮され、ピンポン玉大になったパンが出てきた。
泣き声が響く。
詰まってたから声出なかったんだな…なんてぼんやり思う。
口の中と顔を確認する。
子供を抱きしめる手にいつもより力が入る。
安堵すると共に、少し泣いた。
自分が子育てを始めて知った「マルトリートメント」
知った今思えば、
心理的マルトリと性的マルトリのデパートだった祖母。
高校を卒業して家を出るまで続いたあれやこれやを
死ぬ前のごめんなさいたった一言で済ませて許されようとしている姿はとても滑稽だった。
許される訳がないのに。
地獄に落ちていることを切に願う。
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思春期にやられたお風呂のドアガチャは
今思い出しても意味が分からないし恐怖でしかない。
うちの地元はしっかり田舎なので
夜になれば星がかなりしっかり見えたりする。
更に冬だと日が落ちるのが早いので
部活帰りやバイト帰りでも難なく見える。
見上げるとそこに在る、詳しくなくても分かる三角形とベルト。
星を見上げながら深々と冷える空気の中にいる時は
何故かじんわりと静かで心地良い時間だったように思う。
夜空を見上げながら歩いて看板にぶつかったのも
更にそれで頭に擦り傷が出来たのも
まあいい思い出だったのではないか。…痛かったけれど。
そんな
冬の日の帰り道の記憶。