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1/21/2023, 8:25:39 AM

海の底
ぷくぷく、ぷくぷく。
呼吸の泡が上がっていく。おかしいな、水のなかだよな。視界が揺らめき、青味を帯びた流動する世界は、たしかに水の中だと俺に確信させる。
「剣優、おきて」
声がする。海みたいなとこだと思ったんだけど、水槽?きみの所有する水槽なら、悪くは無いかな。ぐん、と浮上する感覚。

1/19/2023, 12:35:03 PM

君に会いたくて
ば、と起き上がる。メールのやり取りを見返していたら、どうしてもどうしても会いたくなって、電話をする。「竜胆?」「起きてる?」「起きてるけど……」「今から行く」「え、」ぷつりと通話を切って、家着に上着だけ羽織ってバイクのキーを引っ掴む。
「りんどー、どこ行くの?」
「りなん家!」
珍しく起きてる兄貴がぱちりと目を開き、にんまり笑う。たぶん兄貴も後を追ってくるだろう、

1/17/2023, 11:59:34 AM

木枯らし
さむい、と服の袖に指をしまいこむ仕草が好きだ。
「手つなぐ?」
「さむい」
「繋いだらあったかいよ。俺の手、いつもあったかいでしょ?」
けれど、そのちいさく冷たい指先を、仕舞い込ませる木枯らしはだめだ。軽く手を引いて、自分の手の中へ収める。
口を尖らせながらも指先を絡めてくれる。そんな表情を見せてくれる木枯らしは、。

1/15/2023, 11:26:10 PM

この世界は
この世界は不平等にできている。
あたしと彼女が並んでいても、牽制になんてならない。(灰谷の名前を知っているやつの前を別として。)
カップル割も効かないし、ナンパも止まない。
こんなにこんなにこんなにこんなに愛しているのに、あたしとあなたの凹凸は決して互いのもとに収まらない。
ああ、もしも、もしも、と。

1/14/2023, 1:40:00 AM

夢を見てたい
夢を見ていたい。
おまえが息をして、オレをみて、竜胆、って呼んで、笑って、腕を広げて、オレがそれを丸ごとひっくるめて抱きしめて、腕に収めて、「もう離さない」ってキスをする。

棺のなかに釘を刺されたような視線を持て余しながらそう思う。夢を見ていたい。おまえがちゃんと生きている夢を。

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