落涙の箱庭と呼ばれるこの町の中央には
一雫の涙を零し、祈る女神の像がある
「女神のラクリマ」と名付けられたその像は
愛を失くした女神の姿を象ったものらしい
私は、雨が降るたびにいつも彼女を思い出す
今でも愛した誰かを想って泣いているのかと
もう二度と戻らない日々を思い出して
哀惜に囚われているのか、なんて
貴女が聞いたら笑ってくれるだろうか
本当はずっとわかっているんだ
過去に囚われ、前を向けないのは私の方だ
数年前貴女を失った哀しみに溺れているのは
他の誰でもない、私のことなのだと
女神様、貴女が微笑むのではなく泣いているのは
私のような人間に寄り添うためなのですか
私のような、愛を失くした人々に
素敵な夢だったよ
貴方の隣にいられた日々は
私の人生で最も幸せな瞬間だっただろう
何ものにも代えがたいくらいに
だからこそ後悔しているの
すぐに会えなくなるとわかっていたら
もっと私に勇気があれば…
貴方に想いを伝えればよかった
たとえそれが叶わなくても
ただ一度でも、貴方と手を繋いでみたかった
もう私はここまでか
これ以上は誰の力にもなれない
結局のところ実力不足だったんだ
皆の足を引っ張るだけだった
彼らと共に歩んで
誰かの助けになれたらだなんて
身の丈に合わない、叶わぬ夢だったんだ
もう何日も帰ってきていない
一体どうして
いつもみたいに行ってきますと言って
いつもの笑顔で出かけていったのに
全部普段通りのままだった
何も心配することなんてないはずなのに
どうしてこんなに
心のざわめきが気になって仕方ないの
今まで君を探していたが
本当はずっとわかっている
君は遠い場所にいるんだろう
私が到底辿り着くことのできない場所に
思えば君は風のようだった
自由で縛られず、飄々としていて
君に背中を預けて戦ったことが
まるで遠い昔のことのように感じる
君は今頃何をしているのだろうか
強く勇ましい君のことだ
何にだってなれるだろう
私がなれなかった英雄にだって
どこかでなれているかもしれない