ねぇ、貴方にとって最もつらいことは何?
昔、そう問われたことを思い出した
当時はいきなりの問いに
何も答えられなかったけど
今ではきっと
貴女と同じ答えを言えるだろう
私はね、別れというものが一番つらい
たとえどんな終わり方だとしても
その人と過ごした日々はとても楽しかった
その記憶が頭から離れなくて
それなのに、もう二度と戻らないのだから
おやすみなさい、またあした
貴方は毎晩そう言ってくれた
夜の静けさに飲まれる私に
幸せな夢を見れるようにと
思えば、刹那の幸せだった
こんなにつらいなんて思わなかった
貴方よりずっと長い時を過ごしたというのに
別れの覚悟もできていなかった
でも、私は大丈夫
だって、貴方はきっとまた会えると
全てを忘れても、いつかきっと会いに行くと
私に約束してくれたから
だから、最後は笑顔でお別れをしよう
貴方がいつもしてくれたみたいに
私は貴方の頰をそっと撫でて
貴方に優しく微笑みかけた
今まで本当にありがとう、愛しています
おやすみなさい、またいつか
もうどうしようもないの
今さら何を言ったとしても
私の言葉は届かないのだから
でもそれで構わない
私はこのまま静かに消えて
二人の愛を祝福しよう
哀しみに貫かれたこの心に
ただ一輪の花を手向けて
記憶を失ったと告げられた
何も知らず、何も思い出せない
でもずっと夢に見る人がいる
夜明けの空のような美しい瞳を私に向けて
優しい声で「大丈夫」だと言ってくれる
きっと私の大切な人なのだろう
忘れてはいけないはずなのに
ずっと側にいたはずなのに
ねぇ、あなたは誰なのですか
こんなにも愛しく感じているのに
どうして思い出せないの
愛しています、ごめんなさい
抱いてはいけない想いを手紙に綴った
貴方に気づいてほしいなんて
こんな身勝手な願い、消えてしまえばいい
誰かを愛することがこんなにも苦しいなんて
愛されたいと願うことが
こんなにも心を引き裂くなんて
愛はいつでも暖かくあるものではないと
誰も教えてくれなかった
心から貴方を愛しています
この世の全てが輝かしく映るくらいに
でも、貴方は知らないままでいい
貴方に書いたこの手紙の行方は
貴方ではなく、静かに揺らめく炎の中に