「ささやき」
襖の奥から途切れ続きの囁き声 それはこの家の声なのだ
「春恋」
一通の桜の花弁が封された手紙から
「遠くの声」
声が聞こえたら振り向かずに一直線に走って逃げなさい
「静かな情熱」
漆を塗る 静かな情熱を色に込める
「物語の始まり」
紙とペンがあればただ一言の文字から物語が見え隠れの始まり
「影絵」
襖に写る姿は何方?如何様?それとも…?
「星明かり」
鉄の番鳥から放たれる探照灯の筋
「夢の中へ」
霧雨の中で夢となりし骸骨踊る
「君と僕」
俺とお前は同じだ。暫くお前(本物)は休んで俺(偽物)が表側に出るよ
「風景」
一度見た風景は数年数十年後変わらずにあるのだろうか?
「ひとひら」
ひとひらの記憶を頼りに訪ねるあの夢の中の
「遠い約束」
貴方から託された懐中時計は遠い約束の分身だったのですね
「元気かな?」
あー…筆無精で悪いな。元気にしているか?
まぁ互いに死なない程度に生きろ
「好きだよ」
反物に髑髏の刺繍を施している君の姿を見てたら
次は般若の刺繍を施し始めた
自分の好きなモノを主張出来る君が好きだよと密かに思う
◆
「新しい地図」
「みてみてー。このへんのちず、かいてみたー」
娘が誇らしげに見せてきた落書き帳には「あたらしいちず」と
タイトルの下に道路と線路らしき棒が書かれ、
建物や犬を表す絵が書かれていた。
その一角に丸い記号が重なっている絵に
「…このたぁちゃんとかわちゃんて…?」
「あそびにいくこうえんのとちゅうにあるの」
公園の途中にそういう場所あったかなと?思い出してる最中に
「いしっころがたくさんあってつみきのようにいしが高くあるところ」
それって…僕は嫁の顔を見て
「大丈夫。悪いことしないように伝えてあるよ」と合図
娘の書いた「あたらしいちず」と書かれた新しい地図には、
僕達が見えていない場所が書かれていた。
「フラワー」
ワイヤーで花弁の形を形成していく
君の好きな色のマニキュアで色を付けていく
ほら、二度枯れることのない花の完成だ
永久冷凍保存された君の体に咲いた赤い花弁と一緒