#32『飛べない翼』
こんなもの
劣等感を与えるだけで
ただの重荷でしか無い
なんで皆はできるのにって
悔しくて仕方がなかったけど
私にできるのは
たとえ少しずつでも
一歩ずつ確かに
進んでいくことだから
我が道を行こう
周りを気にしすぎちゃダメ
ファーストペンギンは私なんだ
#31『意味がないこと』
貴方にとって、感情に振り回されて
すべきことができないようじゃ
アホらしくてバカみたいかもしれないけど
私にとって、感情に振り回されて
喜んだり悲しんだりするから
人ってカワイイ生き物なのよ
確かに生きるために必要なのは
たかが3つくらいだろけど、
他にエネルギーを注ぐ余裕ができて
より人間らしく生きたからこそ
今の世界があるんだし
それを無駄だなんて言わないで
この言い合いに落ちはないだろうけど
貴方との時間は嫌いじゃないわ
だってとっても有意義だもの
#30『あなたとわたし』
好みも行動も真反対もいいところ。こんなに私達違うのに、どうして付き合ってるんだろうね。話が合わなければつまらないはずなのに、あなたならいつまでも聞いていられる。もっと知りたいと思える。これってすごいことだよね。1人じゃ気づけなかったこと、今までになかった考え、そのどれもが刺激的でこの上なく愛しくて。だからこれからも一緒にいたいな。
#29『柔らかい雨』
傘をさすほどでもないか、とそのまま歩いていれば手を引かれて中に入れられる。ペースも合わせてくれるし、車道側は譲らないし、肩ちょっと濡れてるじゃん。いつからそんな紳士的になったわけ?
お互いに何も喋らないまま信号で止まって待つ。跳ね返る雨が陽炎みたい。再び歩きだしてしばらくすれば家につく。送ってもらっちゃったな。また明日ね、と言えば片手を上げてまた明日、と返される。折り畳み傘はバックに入れたまま。
#28『一筋の光』
澄み渡った空の下、心地よい風が青々とした草原に吹く。彼の動きには一切の無駄が無い。剣は川の如く宙を流れ、そのまま一気に皮を切り肉を割き、勢いよく飛ぶそれは地面を赤黒く染める。
互いに命のためといっても酷いに違いないはずのこの光景に、なぜ心奪われているのだろう。なんて美しい後ろ姿なのかしら。何があろうとも彼は絶対に守ってくれる。私は無力だけど、ただ1人、安全な場所から見守っていればいい。
いつも導いてくれるその手で何人殺した?本当はどこへ連れて行くつもりなの?
__なんて、気にならない。戻ってきた彼は私の身を案じて声をかける。怪我なんてするわけないのに。
父上を裏切ることになっても、母上を悲しませようとも、彼がいればそれでいい。いつか、もっと遠く、私の知らないところまで連れていって…………
馬の歩くリズムが心地よくて、いつの間にか彼の腕の中で眠ってしまっていたみたい。
次に目を覚ますと日は既に沈んでいて、1本だけ傾いだ街頭が怪しく明滅していた。