#60『眠りにつく前に』
夜半の微睡みに迷う前に
貴方の声で
名前を呼んで抱きしめて
お休みと言って
キスをして
#59『踊りませんか?』
女の子だもん、豪華なパーティーにはやっぱり憧れる。女優鏡の前でキラキラのアイシャドウとツヤツヤのリップを塗って、髪もクルンと巻いて、フワッとレースが上品なドレスを着るの。
会場にはきっと大勢いて、それぞれ談笑してる。私はスイーツなんか頬張りながら1人楽しんで、後ろから声をかけられる。
咥えていたフォークをお皿に乗せて片付ければ、手を取って口づけられて、「どれがお気に召しましたか」と聞かれて答えれば、「きっと貴女との時間のほうがずっと甘いのでしょうね」なんてキザな台詞を言ってくるけれど、悪い気はしないから「試してみる?」なんて悪戯に笑いかけて、相手の反応を試してみる。
流れ始めた音楽にダンスの誘いを受ければ、断る理由もなくて、手を重ねてフロアに向かう。軽く腰に添えられる彼の左手と彼の肩にそっと触れるだけの私の右手。互いにもう一方の手は、初めての恋人同士みたいにキュッと大事に握ったままスッテプを踏む。
トキメキと楽しさとで胸が一杯になって、きっと私、世界で1番美しくて幸せな女の子なんだわ。
踊り終わって髪にキスを落とされればもう、私は彼のことを忘れられなくなるのね。
#58『鳥のように』
あの鳥のように
貴方のためだけに、愛を歌いたい
そしたらきっと撫でてくれる
鍵盤11度届く指で
もしくは本でもいい
貴方と長い時間、共に過ごせるから
願わくば
ありのままの私で
貴方の側にいたいけど
やっぱり今は鳥になって
貴方の下へ飛んでいきたい
#57『さよならを言う前に』
離れても心は繋がってると信じたい
でも目に見えないのは確かだから
どうか熱く抱きしめてほしい
#56『失恋』
先生に用があると呼び出された放課後
面倒な仕事を頼まれて、厭々説明を聞く
ふと2階の窓から昇降口を見下ろせば
ハッと息を呑み、胸が締め付けられようだ
笑い合って並んで帰る君と彼女
その姿で瞬時に繋がった
彼女と話してたから君も放課後居残ってたとか、
バレンタインに貰えたという数とか。
全部全部わかっちゃった
そんな前から叶わぬ恋だったなんて
自分が惨めに思えてどうしようもない
でもそんなこと、
今先生に言うわけにもいかないし
少しだけ引きつる笑顔を片手で押さえながら
何事もなかったかのように振る舞った