「帰っちゃうの…?」
「うん。」
私、神崎莉子こと佐原真依は今、家に帰ります。
「もう、会えないかもしれないのに?」
「帰らなくちゃ、明日会えないでしょ?」
「それはそうだけど。」
「今日帰るのは明日また会うため。」
「!!」
「みんな、いつも一緒な訳じゃないの。
みんな、家がある。」
そう。私には家がある。この子達にはないけど…
少なくとも私は家がある。
そこに帰らなくちゃいけない。
「だから…ごめんね。」
「おねーちゃん…」
私は此岸の人。この子達は、『彼岸』の人。
『此岸と彼岸』この2つの違いは分かるだろう。
此岸は生きている人がいる場所。
彼岸は…、死んだ人がいる場所。
私は今、彼岸にいる。
このままだと彼岸の人になってしまう。
「おねーちゃん!帰らないで!!」
「っ…!!」
こんなこと言われたら帰れるわけ無いでしょ…!!
「クロちゃん、シロちゃん。私は、帰らなきゃいけないの。」
「ここに住めばいいのに!」
「…出来ないの。」
「でも…」
「いい加減にしろ…」
「イミゴ!!」
イミゴ。漢字に直すと、『忌み子』
イミゴは死ぬべきじゃなかった。
「イミゴ…」
「真依は…帰らなくちゃいけないんだ!!」
「イミゴ!」
「タガタさん!!」
タガタさん。昔々に死んだ弟の守り神となってこの神社にいる。
「クロ、シロ。真依ちゃんは帰らなくちゃならないんだ。離してやって。」
「タガタ…」
「タガタさん…」
クロちゃんとシロちゃんにとっては可哀想だけど…帰らなきゃなんだよね…、でも…
「帰りたくない…」
「はぁ?!」
イミゴが怒った。
「お前は帰るんだ!!家に!!ここにいちゃいけない!!」
「でも…」
「お前は優しすぎる!!」
「っ…!!」
そこで私は、はっ、とした。
その言葉どこかで聞いたことがある。
「お前は優しすぎんだよ!!」
そうだ…、瀧だ…。
瀧に言われたんだ。私……
私は優しすぎる。たしかにそうかもしれない。
だから自分の意思ではなく相手のことばかり考えている。
でも……今回は………
「イミゴ!!」
「??」
「私、ここにいて、みんなを助けたい!!」
「…はぁ?!無茶言うな!!」
「でも!!このままみんなが死んだままじゃ嫌だ!!」
「…真依…」
「今やっと、イミゴのこともタガタさんのことも、クロちゃんとシロちゃんのことも、この神社のことも思い出したのに…こんな結末ないよ…」
「…」
「私は、『佐原真依』なの!!」
「…!!」
「だから、みんなを救う!!」
「真依」
「おねーちゃんは帰らなくていいんだね!」
「…そう言われると…」
「…させないよ(ボソッ)」