人の手で織られた手編みのセーターは、おとぎ話にも出てこないゆめまぼろしの衣装なのでしょう。私は、生まれてから一度も見たことも着たこともありません。
私が唯一見た手編みのものは、深夜の天井から降りてきた蜘蛛の糸です。
アラクネが織ったと言われる海の神の波飛沫湧き上がる凛々しい姿よりも、数多のたましいを吸い尽くした銀色に輝く一本の糸のほうが大変美しかったです。
(241124 セーター)
汗をだらりと垂れ流し、血潮を濾過して涙を流し、皮膚とするりと滑らせ、肉をほろりとほぐし、血管をとろとろと溶かして、骨をさらさらと撒いていく。
落ちていく落ちていく、私の無知の脊髄、無恥の脳髄。ぼろぼろと落ちて、あとに残ったものは鮓答だ。
私の内臓の中で産まれた丸い白の石が、ころころと転がって、人に踏まれ投げられ割られても、また落ちて生まれ変わっていく。
(241123 落ちていく)
自分で作った料理にも、
「いただきます」「ごちそうさま」
と言える人と、私はパートナーになりたいです。
(241122 夫婦)
今日も、私のアニムスが困っている。
どうすればいいのか分からなくて、相手も自分も傷つけて泣いている。
またアニムスをほったらかしにして、気がついたら殺してしまった。
ごめんね、私のアニムス。あなたの為に、本を読んであげる。
あなたが私と一緒に生きられるように、本を読んであげるからね。
(241121 どうすればいいの?)
自分の両手に収まるぐらいの大きさがいい。
ちょうど本を開くように、思い出をよみがえらせて、自分の温もりと血潮に馴染んだ宝物を優しく撫でる。自分の身体と記憶ごと、どこにでも持っていける宝物が、私にはちょうどいい。
(241120 宝物)