あの頃の私へ
過去の私も、今の私も、あまり変わってません。
楽観的な性格も、後回しにしがちなところも。
何とかなるよ。
また明日
わたしの毎日は草花を愛でること。
草花にあいさつをして、水をやり、時々やってくる人間に売る。人間と関わるとろくなことは無い。
だからこそ、人里離れた場所に店を構えているのに、最近は毎日のように大柄な男がやってきては居座る。
営業妨害だ、と思う。
「おい魔女、今日こそ薬をくれ」
「わたしは魔女ではありませんし、ここは薬屋ではなく花屋なので薬はありません。薬は町の薬屋さんへどうぞ」
「俺が欲しいのは魔女の薬だ。町では売っていない」
「そうですか。では、ほかの店をあたって下さい」
そして二度と来るな。わたしの気持ちは男にはまったく通じなかった。
しばらく店内を見回していた。ぽつぽつと質問されて、答えて、違う話をして。
ようやく日が落ちた頃、男が動いた。
「……また明日来る」
「……そうですか」
いや来るなよ。
また明日、だなんて、言われても、困る。
困るんだよなぁー……。
また明日なんて言いながら、明日誰も来なかったら、少し寂しいじゃないか。
少し変わってきた気持ちが変でなんだかくすぐったい。
「さてみんな、おやすみ」
わたしの一日の終わりは草花への挨拶。
また明日。
理想のあなた
あなたはわたしの理想だけど、
わたしはあなたの理想なのかしら
理想って難しい
いま、幸せだったら、
過去に後悔することはない
いまが不幸だとしたら、
過去を後悔するかもしれない
いま私は幸せだと思う
何も後悔していないから
【⠀風に身をまかせ⠀】
「怖いの? あんた、楽しそうにしてたくせに」
「うるさい」
サークルでスカイダイビングに来た。
楽しそうにしていたのは事実だし、楽しく思っていたのも事実。
でも、実際に空へ飛んでしまえば、忘れてた恐怖がやってきたのだ。怖くて何が悪い。
テレビ番組なんかで、よく芸人とかが飛んでいるし、恐がっているのは演技だろうと思っていた。
恐怖を表に出せる芸人さんが凄い。本当に、怖いのに怖いと言えない。
「大丈夫ですよ。滞空時間はそんなに長くないですから、あっという間に着きますよ」
後ろから声が掛かる。
そんなことが分かっていても、簡単に消える恐怖じゃないんだってば。
言いたいのに、声に出ない。
死なないと分かってるのに、命を投げ出す行為をする。スリルを味わうアクティビティだと思っていたし、納得もしていたのに、怖い。
でも時間はやってくる。
「お先〜」
さっき声をかけてきたやつが先に落ちた。
落ちたとしか言いようがない。
そして次のやつも楽しそうに空に消えた。
そして、次は俺。
怖い、怖い。でも、後ろから追い立てられるように縁に立って、気付いたら空に放り出されていた。
声なんて出なかったけど、地上の小ささに自分のいる高度の高さを感じた。
不思議だけど、飛ぶまでは怖いけど、飛び出てしまえば思ったより怖くなかった。
急にガクンとなって、パラシュートが開いた。速度が急激に遅くなった。
凄いなパラシュート。
そうして空の旅はあっという間に終わって、気付いたら地面に足が、というかおしりが着いていた。
「あっという間だっなー 」
「ほんとになぁ。記念にカメラ入れればよかったかなぁ?」
少しの恐怖と楽しかった空の短い旅。
自分の感想はもう二度とやりたくない。
ただ風に身をかせるのもいいなと、それだけ思った。
二度とスカイダイビングはやらない!
そう熱弁したら、「じゃあ次は海の中だな。普通のダイビング行こうぜ」と誰かが言った。
……サークル、辞めようかな。身が持たないもん。誰かが言ったその言葉に、俺はものすごく同意した。
サークルってこんなんだったっけ?