夏野

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また明日

わたしの毎日は草花を愛でること。
草花にあいさつをして、水をやり、時々やってくる人間に売る。人間と関わるとろくなことは無い。
だからこそ、人里離れた場所に店を構えているのに、最近は毎日のように大柄な男がやってきては居座る。
営業妨害だ、と思う。

「おい魔女、今日こそ薬をくれ」
「わたしは魔女ではありませんし、ここは薬屋ではなく花屋なので薬はありません。薬は町の薬屋さんへどうぞ」
「俺が欲しいのは魔女の薬だ。町では売っていない」
「そうですか。では、ほかの店をあたって下さい」

そして二度と来るな。わたしの気持ちは男にはまったく通じなかった。
しばらく店内を見回していた。ぽつぽつと質問されて、答えて、違う話をして。

ようやく日が落ちた頃、男が動いた。

「……また明日来る」
「……そうですか」

いや来るなよ。
また明日、だなんて、言われても、困る。
困るんだよなぁー……。
また明日なんて言いながら、明日誰も来なかったら、少し寂しいじゃないか。

少し変わってきた気持ちが変でなんだかくすぐったい。

「さてみんな、おやすみ」

わたしの一日の終わりは草花への挨拶。
また明日。

5/23/2024, 9:15:37 AM