たとえば、願い
キラキラ光る無垢な願いは
おとなになったらきえてしまって
どうなりたかったのか忘れちゃう
たとえば、おもいで
ポロポロとこぼれおちそうで
語りあったり、写真に撮っておかないと
どこから来たのか忘れちゃう
たとえば、知識
コツコツと積み上げても
大事なことがわかってないと
どこを目指したのか忘れちゃう
形の無いものは
ほうっておくと
どんな形か忘れちゃって
形の無いものになっちゃうよ
〜形の無いもの〜#9
息子をつれて普段訪れない公園に来た
息子は保育園の先生と時々来るらしく
ジャングルジムがお気に入りらしい
駆けだす息子の行く先に
ジャングルジムがあった
久々に見ると小さく感じた
大人には狭い格子の中に
息子は難なく入っていき
少し苦戦しながら登っていく
パパも入って、という息子に
パパは入れないよ、と応える
息子はひとりで挑戦を続ける
もう遊べるようになった息子と
もう遊べなくなった自分に
微笑ましさと寂しさを感じる
いつの間に大きくなったんだろう
〜ジャングルジム〜#8
新月の夜に風がささやく
今夜は楽しい祭りだよ
鬼灯のあかりに照らされて
門前町が浮かび上がる
古道具たちが目を覚まし
太鼓の音で祭りがはじまる
鳴り物たちはいつもどおり
どんちゃんわいわい賑やかに
蛇の目たちは自慢げに
互いの柄を見せ合って
蔵の中の本たちは
久々の風に伸びをする
昔と同じ祭りの風に
山の紅葉もざわめいて
はらりと散った紅が
薄暗がりに色を差し
しんしんと夜が更けていく
祭りの夜が更けていく
お寺の鐘がなったから
今夜の祭りはもうおしまい
楽しかったね、またやりたいね
古道具たちの声が聞こえる
新月の夜に風がささやく
今夜も楽しい祭りだったね
〜声が聞こえる〜#7
秋が来たら風が吹く
暑さを忘れる風が吹く
さらりとさみしい風が吹く
秋が来たら葉が染まる
炎のように葉が染まる
命を燃やして葉が染まる
秋が来たら虫が鳴く
静かな夜に虫が鳴く
今夜が最期と虫が鳴く
秋が来たら月が出る
ひとりの夜に月が出る
だれかと見たい月が出る
秋が来たら人恋し
生きる孤独に人恋し
愛しき別れに人恋し
〜秋恋〜#6
一人の時間を大事にしたい 自分らしくあるために
散歩の時間を大事にしたい いつでも前を向くために
読書の時間を大事にしたい 自分の世界を広げるために
日記の時間を大事にしたい 自分の言葉で語れるように
対話の時間を大事にしたい 人にやさしくなれるように
考える時間を大事にしたい 大事なことを守れるように
〜大事にしたい〜#5