「どこにも行かないで」 #41
あなたがいなくなる夢を見た。
死んだんじゃない。ただ、いなくなる夢。
私のものじゃなくなって、あの子のものになる夢。
声を上げて飛び起きた。
心拍数が上がって、呼吸が荒くなって、嗚咽を漏らす。
夢で良かった。でも、もし正夢になったら?
私なんかよりあの子の方があなたに釣り合う…?
どこにも行かないで。私だけのあなたであって。
本当に、私にはそう言える権利があるのだろうか?
「君の背中を追って」 #40
いつも前を行くあなた。
いつも追い求める私。
私はあなたを知りたいの。
知らなかったな。
私の前では、控えめにはにかんでいるのね。
知りたくなかったな。
あの子の前では、あんなに眩しく笑うのね。
あなたのことを全て知りたくて。
あなたのことなら全部愛せると思って。
あなたの背中を追っていたの。
勝手に追ったのに、忘れたいなんてわがままね。
「好き、嫌い、」 #39
スキ、キライ、スキ、キライ、スキ、キライ、スキ
……大好き―――♪
2025年3月6日 木曜日。
あなたからの52日振りの連絡。
インスタのノートに流した曲への返信。
「この人のあの曲めっちゃいいよ」
もう、冷められて自然消滅してしまうかと思っていた中での連絡。
「スキ」という気持ちを無理やり「キライ」という言葉で抑えていたけど結局は「大好き」という想いが、苦しさが、私にぴったりで流した曲。
2か月話してなかったから、こんな些細なことで連絡が来ると思わなかった。
以来、私は「好き」「嫌い」と聞くとこの曲とことエピソードを思い出す。
「雨の香り、涙の跡」 #38
ぺトリコール、と言うらしい。
いわゆる雨の匂いというやつ。
梅雨の時期によく鼻腔をくすぐる、あの香り。
recall、凍る、ぺトリコール。
あの曲の一節。
それで思い出したが、雨上がりに紫陽花に残る雨粒は、まるで泣いたあとのよう。
されど、それは酷く美しい。
あなたは紫陽花みたいな人。
一途なのに、きまぐれで移り気で、寛容に受け止めてくれて、元気な女性。
そして、泣き腫らした後の涙の跡でさえも美しい、私の最高に愛おしい人。
「糸」 #37
あなたの、大好きな友人と繋がる糸。
あなたの、妹のような友達と繋がる糸。
あなたの、何でも言える親友と繋がる糸。
あなたの、好きだったあの子と繋がる糸。
あなたの、頼っている家族と繋がる糸。
あなたの、尊敬する先輩と繋がる糸。
あなたの、大切な後輩と繋がる糸。
あなたが嬉しそうに話すのが私のことだけならいいのに。繋がっているのが恋人の私だけならいいのに。
私以外との関わりの糸を、全て切ってしまいたい。