「届かないのに」 #36
大好き。愛してる。可愛い。愛おしい。恋しい。寂しい。嫉妬する。しんどい。苦しい。いたい。
お願いだから、あの子と話さないで。
その笑顔を私にも向けて。
嫉妬で人を嫌いになりたくないの。
私だけ見ててよ。
あなたに届けるのは、ほんの僅かな好意だけ。
届かないのに、届けないのに存在してしまうこの感情がうざったい。
「記憶の地図」 #35
LINE、DM、そして私の微かな記憶。
SNSはあなたのことを思い出すのにとても便利だ。
あの時どんな話をしたっけ。
こう言っていたのはいつ頃の話だったかな。
私の記憶に溺れているキーワードを探す。
見つけたら、そこからあなたとの思い出が蘇る。
あなたのことを見失ったら過去の会話を見返そう。
きっと履歴は地図のように、私をあなたまで案内してくれる。
「マグカップ」 #34
君はよくマグカップを使うらしい。
暖かいものはもちろん、冷たいものを飲むときでさえも、グラスではなくマグカップ。
その小さな手のひらにはやや負担が大きいのではなかろうか。
そう思いつつもきっと可愛いのだろうな、と想像してしまう。
通話越しの君のマグカップの音が既に愛しい。
きっと、冬にはココアの入ったマグカップを、いつもはしない萌え袖をして持つのだろう。
早くココアの季節が来ないだろうか。
「もしも君が」 #33
もしもあなたが、私のことが大好きだったら。
きっと毎日のように連絡をくれるだろう。
きっと器用に私に甘えてきてくれるだろう。
きっと溺れるほどの愛情表現をしてくれるだろう。
もしもあなたが、私のことが大嫌いだったら。
きっと数ヶ月も連絡をくれないだろう。
きっと器用に私のことを避けるだろう。
きっと好きも嫌いも表現してくれないのだろう。
たとえば、あなたは好きと言いつつ私のことを避けたりする。
あなたの行動の真意が私には汲み取れない。
「君だけのメロディ」 #32
――、 ―、 ―――♪
あなたと繋いだスマホから音が流れてくる。
あなたの指先が紡ぐ、ギターの音。
まだ少したどたどしい、かわいらしい音。
まだ上手く弾けなくて恥ずかしいから、と私にだけ聴かせてくれる音。
途切れ途切れのその流れが、あなただけのメロディとなる。
そしてそれが、私だけが聴いたメロディになる。