「マグカップ」 #34
あなたはよくマグカップを使うらしい。
暖かいものはもちろん、冷たいものを飲むときでさえも、グラスではなくマグカップ。
その小さな手のひらにはやや負担が大きいのではなかろうか。
そう思いつつもきっと可愛いのだろうな、と想像してしまう。
通話越しのあなたのマグカップの音が既に愛しい。
きっと、冬にはココアの入ったマグカップを、いつもはしない萌え袖をして持つのだろう。
早くココアの季節が来ないだろうか。
「もしも君が」 #33
もしも君が、私のことが大好きだったら。
きっと毎日のように連絡をくれるだろう。
きっと器用に私に甘えてきてくれるだろう。
きっと溺れるほどの愛情表現をしてくれるだろう。
もしも君が、私のことが大嫌いだったら。
きっと数ヶ月も連絡をくれないだろう。
きっと器用に私のことを避けるだろう。
きっと好きも嫌いも表現してくれないのだろう。
たとえば、君は好きと言いつつ私のことを避けたりする。
君の行動の真意が私には汲み取れない。
「君だけのメロディ」 #32
――、 ―、 ―――♪
あなたと繋いだスマホから音が流れてくる。
あなたの指先が紡ぐ、ギターの音。
まだ少したどたどしい、かわいらしい音。
まだ上手く弾けなくて恥ずかしいから、と私にだけ聴かせてくれる音。
途切れ途切れのその流れが、あなただけのメロディとなる。
そしてそれが、私だけが聴いたメロディになる。
「I love」 #31
あなたに伝えたいことがある。
でも、「I love you」なんてストレートには伝えられない。
だから、英語が苦手なふりをしてこう言うの。
I don't know how to say this message in English.
So I say it in Japanese.
"Tuki Ga Kirei Desune"
「雨音に包まれて」 #30
―――やだっ!ねえ!開けて!!開けてよっ!!
雨が嫌い。雨は怖い。
思い出したくもないトラウマが頭を過ぎるから。
深夜11時。数多の雨粒が窓に打ちつけられている。
明日は大事な大会だというのに寝られない。
怖くて怖くてたまらない。
なんとか心を落ち着けようと明るい画面とにらめっこしているが、文字の上を目が滑るだけ。
そんな中の、あなたからの通知。
「大丈夫?」「結構雨降ってるけど」
強がって、素直に怖いとは言えなかった。
でもあなたはそれを見破って「電話しよ」と一言。
今日の大会に寝不足が響かなかったのは、あなたが安心させてくれたおかげ。