「雨音に包まれて」 #30
―――やだっ!ねえ!開けて!!開けてよっ!!
雨が嫌い。雨は怖い。
思い出したくもないトラウマが頭を過ぎるから。
深夜11時。数多の雨粒が窓に打ちつけられている。
明日は大事な予定があるというのに寝られない。
怖くて怖くてたまらない。
なんとか心を落ち着けようと明るい画面とにらめっこしているが、文字の上を目が滑るだけ。
そんな中の、君からの通知。
「大丈夫?」「結構雨降ってるけど」
強がって、素直に怖いとは言えなかった。
でも君はそれを見破って「電話しよ」と一言。
今日に寝不足が響かなかったのは、君が安心させてくれたおかげ。
「美しい」 #29
あなたが美しいと思う。
あなたを構成する全てのものが美しいと思う。
くるりと上を向いた睫毛。
やや直線的で少し中性的な体のライン。
縮毛矯正をかける前は毛先だけ丸まっていた髪。
低めのややハスキーな声。
左右対称で完璧だと感じる笑顔。
話す相手によって異なる抑揚の付け方。
まるで世に知られていない芸術作品のような。
とても美しいと思うけれど、誰にも教えようとは思わない。
私だけが、彼女の真の価値を知っている。
「どうしてこの世界は」 #28
どうしてこの世界は思い通りにいかないのだろう。
かっこつけたかったのに失態しか晒さず。
笑わせたかったのにから回って失敗し。
話したいときには上手く話しかけられず。
愛情も好意も照れて言葉にすることができない。
どうして私は思い通りにいかないのだろう。
どうしてあなたは思い通りにいかないのだろう。
「君と歩いた道」 #27
技術室から保健室まで。
私があなたと歩いた道はそこだけかもしれない。
あなたが体調を崩していたのに無理やり学校に来ていた日の二限目。
見るからにしんどそうで、泣きかけていたあなたを保健室に連れて行った。
あなたと歩いた道は涙で染まっている。
だから、これから一緒に歩く道は笑顔で彩っていきたいの。
「夢見る少女のように」 #26
好きなところを思い出す。
したいことを考える。
あの子のことを懸想をする。
夢見る少女のように。
やらかしたことを思い出す。
現状の原因を考える。
最悪の結末を想像する。
怯える少女のように。
きっと夢見る少女は、夢見だけではなく邪推もしている。