「さらさら」 #16
ひとつに結わえた、あなたのストレートヘア。
さらさらと、私の指から零れ落ちてゆく。
色白で、たまに少しだけ赤くなる、あなたの頬。
さらさらと、私の頬と触れ合う。
まっすぐで、少し重たいような私の気持ち。
さらさらと、あなたの心から滑り落ちてゆく。
私の愛は、伝わりきってないみたい。
「これで最後」 #15
これで最後にする。玉砕覚悟の告白。
あなたへの気持ちにけりをつけるから。
長かった。
好きになってから1ヶ月と1週間。
好きバレしてから2週間と5日。
日数に直したら38日と19日。そんなに長くないな、と、ふと思った。
自分が好かれてるってことに気付いてびっくりしてたね。ちゃんと告白するって言ったら待ってるって言ってくれたの、嬉しかったよ。
でも、叶わない恋だってことは分かってた。
相手は同性。その上関係はただの友達。
叶わないのを、傷つき傷つけることを覚悟で告白。
なんてことを考えていたのが懐かしい。
私の去年の最高のクリスマスプレゼントはあなただったの。
最後なんてないから。最期までよろしくね。
「君の名前を呼んだ日」 #14
名字、名前、あだ名…
さん付け、ちゃん付け、呼び捨て…
あなたはいろんな名前で呼ばれてる。
でも、あなたを名前にさん付けで呼ぶのは私だけ。
だから、もしも他の人に名前さん付けで呼ばれることがあったら―――
―――私のことを、思い出してよね。
「やさしい雨音」 #13
雨が嫌い。昔のトラウマを思い出すから。
雨が好き。あなたと話した日を思い出すから。
2日とも天気は大して変わらなかったのに、前者は酷く恐ろしく、後者はそっと優しかった。
それはきっと、あの人がとても怖かったから。
それはきっと、あなたがとても優しかったから。
あなたの声が魔法となって私の記憶を塗り替えてくれたから、雨音は優しくなった。
「歌」 #12
去年の合唱コンクール。
500人の視線が集まる体育館のステージの前で。
私は指揮をした。
震える足、固まる指先、そしてあなたと絡む視線。
そのとき私の心拍数があがったのは、きっと緊張のせいだけではないだろう。
なんとか動かした指先が、みんなに歌を紡がせる。
ソプラノの主旋律、男声の裏拍。
それからアルトの、いや、あなたのハーモニー。
もっとあなたの声に集中したかった。けれど、そうするには少し邪魔が多かった。
だから今度は、私と二人きりで歌ってほしい。
あなたで満たされたいから。
君の隣にいたいから。