｢キンモクセイ｣

星が落ちたような道路。

鼻をくすぐる甘い匂い。

あの子の頭にも星が落ちる。

｢行かないでと、願ったのに｣

指の間の温度が低くなる。

放った言葉も重くなる。

｢青く深く｣

大人というにはまだ青い。

成長を求め、深く潜る。

｢子供の頃の夢｣

なんにだってなれた。

今はもう、綺麗事が邪魔をする。

なれる、なんて言いきれない。

弱くなったのか、当たり前なのか。

クレヨンで描かれた将来を思い出す。

｢雨の香り、涙の跡｣

涙の跡をなぞるように、雨粒が頬を伝う。

ほのかな雨の香りが私の体を包んだ。

慰めに似た温かさが、私の歩を止めた。

立ち尽くした私の視界を塞いだのは君の傘。

感じた温もりは、確かな慰めだった。

雨粒を拭った君の手は、雨のように少しだけ冷たかった。