139

Open App
10/14/2024, 4:06:50 AM

 内気で引っ込み思案
 人の視線を感じると途端に縮こまってしまう

 そんな子供だったから

 街中で見かける子供みたいに
 見るもの全てに目を輝かせて
 大はしゃぎしてみたい



『子供のように』

10/13/2024, 8:17:10 AM

 私はチャイムと同時に教室を飛び出した。放課後にバイトがある時は、一旦家に帰って制服を着替えてから出勤しないといけないからだ。過去にバイト先のコンビニで高校生のトラブルがあったことからルールが追加されたのだ。高校のルールなら無視しちゃうところだが、あいにくコンビニの勤務ルールに独自に追加されてしまったから守るしかない。守らないと辞めなきゃで、他にバイト先を探すのも面倒くさいからだ。
 本当はゆっくり歩いたところで間に合うし、余裕もある。でもあと五分で発車予定の電車に乗られると、スムーズに事が進むから急いでいるだけだ。
 人が行き交う廊下を、その間を縫うように走る。リズムよく階段を降りて、あとは角を曲がれば昇降口、と言うところで私は壁にぶつかった。ぶつかった衝撃で後ろに倒れ、尻餅をついた。

「すみません! 急いでいたもので、ホントごめんなさい!」

 ヒリヒリするお尻に耐えながら、頭を下げた。変に言っていざこざを生んで時間を食うよりは、頭を下げたほうがマシだ。謝ったのも先手必勝、早い者勝ちだと思ったから。
 時間も迫っていて切羽詰まっていた私は早々に立ち上がろうとして、目の前に手が差し伸べられていることに気がついた。白くて細くて綺麗な手の指先には、長くてとんがったピンク色の爪が施されていた。

「だいじょーぶ? ケガなさそー?」

 上から聞こえてきた声に恐る恐る顔を上げ、体が硬直した。同じクラスの田村さんだったからだ。田村さんはクラスの中でも派手な方であまり関わりがない。目力の強いアイメイクで、瞬きのたびにまつ毛がバサバサと音を立てそうなほど長い。
 何か反応しないと、と思ったが言葉は何も出なかった。頷くことで精一杯である。
 私が頷いて、田村さんはニコッと笑った。

「マジでよかったー! すんごいヤバい勢いできたからさー」
「てかぽよとぶつかってケガしないとかマジやばい」
「な。この前痴漢してきたジジイの指折ったんじゃなかったっけ?」
「え? ウチ、ジジイに背中押されたら逆にジジイが吹っ飛んだって聞いたんだけど」

 田村さんは咳払いをした。田村さんの後ろでコソコソ話していた田村さんの友だちは、三人とも一斉に口を閉じた。というか田村さん今まで何してきたんだ。ジジイに対して防御力高すぎるんだけど。めちゃくちゃ気になるんだけど。
 そんな私の気をよそに、田村さんは心配そうに声を掛けてきた。

「ていうか急いでたんじゃないの?」
「あ、あ! バイト! ヤバい遅刻!」

 私は目の前の手を咄嗟に掴んだ。次の瞬間には上に引っ張り上げられて立っていた。

「バイトか、そりゃ遅刻ヤバいわー」
「バイトがんば」
「もしバ先でキモいジジイいたらぽよに頼むといいよ」
「何教えてんのバカ」
「ありがとうございます!」
「アンタも何受け入れてんのバカ」

 あっけらかんとした雰囲気で話す友だちに田村さんが突っ込んだ。そして、田村さんは仕方なさそうに笑った。

「まぁ、なんかあったらウチに言って」

 この時の笑顔の田村さんがいつまでも印象に残っている。これが私とぽよの出会いで、ここから私たちの交流が始まったのだ。


『放課後』

10/12/2024, 12:18:20 AM

 新生活ダンボールで窓覆う
 明日には全部整えたい


『カーテン』

10/11/2024, 1:28:36 AM

 なんで泣いているかなんてその時は分からない
 ただ気持ちの起伏を鎮めるために涙を流してる

 あの時、なんで泣いたんだろう?

 と泣き止んでから考えて
 理由を後付けする時もあるけど
 思い当たる節すら涙と一緒に流したから
 やっぱり分からないんだよね


『涙の理由』

10/10/2024, 8:10:35 AM

 先日、『CLUB SEVEN another place』というステージを観てきた。
 ステージ、と言い表しているが、多分ジャンルはミュージカルである。いかんせん、このステージはやることが多い。

 『CLUB SEVEN』シリーズは、昨年で20周年を迎えた。演出、構成、振付等、ステージにまつわるアレやコレやは座長の玉野和紀さんがされている。歌、ダンス、演劇(ミュージカル)、スケッチ(ショートコント)など、エンターテイメントの詰め合わせを豪華キャスト陣でお送りしている。
 記念すべき1回目の公演から出演しているキャスト陣は「レジェンド」と評されている。スケジュールの都合上、毎回出演されているわけではない。今回の21回目公演では吉野圭吾さん、東山義久さん、西村直人さんが玉野さんとともにレジェンド組となっていた。

 このステージの内容だが、実はAパターンとBパターンの2種類ある。一幕の一部分の演出が変わるそうだ。私は今回Aパターンの公演を観た。ロングラン公演や不朽の名作のリバイバルだとおおよそ同じ内容だが、『CLUB SEVEN』シリーズは全て内容が異なる。そして、毎回が濃い。

 一幕のオープニングはテーマソングに合わせて激しいダンスが披露される。この時着ているロングコートがなんとカッコいいことか。
 続けて玉野さんの鉄板演出であるタップダンス。キャスト全員揃ってステップを踏む場面はとても華やかだ。玉野さん演出の舞台は全てにおいてそうなのだが、キャストの限界まで踊らせることが多い。
 オープニングが終了すると、スケッチという短い作品(私はショートコントと呼んでいた)が続いていく。主にテレビ番組やドラマのパロディが多い。それをコント(観客のウケ具合がどうにもコント)として上手い具合に落とし込んでいる。
 いかんせん20年以上続いているステージだ。お馴染みのキャラクターが個性を発揮していく。そして女性キャストがいるにも関わらず、やたら女装が多い。ベテランも新人キャストも等しく女装する。
 また、アドリブも多い。日替わりのアドリブコーナーは一幕終盤で用意されているものの、他の場面でも「ここアドリブでは?」と感じる部分がある。なぜなら座長もキャストも舞台上を自由に動き回るからだ。テンション任せに勢いよく隅々まで動き回るものだから、何度も共演しているベテランキャストですらドン引きしていたりする。役になりきる、よりもキャストの個性が色濃く出るステージなのだ。
 怒涛のアドリブ合戦の後、おそらく昨年から復活した客降り演出がある。これは定番のキャラクター「タマコ」と「ニャンコ」のイケイケギャル2人が客席に降りてインタビューするコーナーだ。もちろん、ギャル2人は女装した玉野さんと西村さんである。インタビューに答えたお客さんはタマコから飴やラムネなどお菓子がもらえる。私が観た回は鹿児島や長崎から来た方々だったり、7thから観に来ている古参ファンの方だったので、大盤振る舞いにいくつもあげていた。

 休憩の後、二幕はいつもクラシカルなショートミュージカルから入るのだが、今回はキャスト紹介からだった。キャストは皆オリジナルTシャツにジャージ姿で一人一人登場した。軽快なトークと気安いやり取り、そして時を止める摩訶不思議なギャグが披露される。観客は時に大笑いし、時にざわつき凍りついた。
 トークの後は『CLUB SEVEN』の醍醐味、「五十音順メドレー」に突入。こちらは曲の歌い出し(もしくは曲のタイトル)の最初の文字が五十音順になっている。次々と歌われていく曲は、テレビでよく聴く定番曲からSNSでバズった最近の曲まで幅広い。ただ歌うだけでなく、曲に合わせてスケッチのようなネタが披露される。CMソングは全てパロディで。アイドルソングはモノマネで。女装に着ぐるみ、マツケンサンバⅡ。とにかく目まぐるしい。観客はここ最近グッズで登場したペンライトを推しキャストカラーに変えて振っていた。
 ここで目の前の席に座ったご夫婦の、通路側に座っていた男性客にハプニングが。『エースをねらえ』のお蝶夫人になりきった北翔海莉さんがすぐそばまで降りてきたのだ。真後ろに座っていた私が(ほぼ)真横にいる北翔さんに向かって「かわいいー!」と迷惑にならない程度の声量で連呼していたが、多分聞こえていない。そんな北翔さん、振りが終わってステージへ戻る瞬間、いきなり前の男性客の肩をガシッと掴んでこう言った。

「私、可愛い!?!!?!?」

 可愛いですよ。可愛いですけども勢いと圧が強い。
 圧倒された男性客は大きく頷くも、多分言葉は出ていなかった。男性客が頷くのを確認して北翔さんはニコッと笑い、ステージへ駆けて行った。嵐みたいな人だった。

 そんなメドレーも終盤に差し掛かり、バラード曲に乗って最後の客降り。会場だった有楽町よみうりホール最大の特徴である「舞台から2階席がスロープで繋がっていて外に回ることなく登って行ける」その強みを活かしてキャストが駆け上がる。多分鈴木凌平さんと北翔さんだったと思う。今回の『CLUB SEVEN』の元気なツートップだったはず。
 今更だが私は下手側の通路横に座っていた。(有楽町よみうりホールは構造上1階席の通路が4本ある)そんな私の前の前、さっき登場した男性客の前に座る女性客。ペンライトのカラーは水色で、吉野さんのファンの方のようだ。楽しげに振っていらしたら、なんと女性客の目の前に吉野さんが通ったのだ。ペンライトの色に気がついた吉野さんは満面の笑みで女性客とハイタッチ。こんなに喜ばしいファンサービスを間近で見られるとは思わず、私も「わぁ!」と見惚れてしまった。
 見どころ満載だったメドレーもいよいよ最後の曲へ。最後の曲は毎回決まっていない。SMAPの「世界に一つだけの花」だった時もあれば、嵐の「One Love」だった時もある。今回は、ミュージカル『RENT』の「Season of l Love」だった。日本版の『RENT』といえば若手舞台俳優たちで演じられているイメージだ。だから、『CLUB SEVEN』に出演する舞台俳優界隈のベテラン勢がこの曲を歌うとは思わず、私は目を見開いてしまった。全体として重厚的なハーモニーはなんだか新鮮で、心にジンときた。

 とまあ、一丁前にミュージカルのレビューをしてみました。時間オーバーしながらも長々書いてしまってすみません。
 『CLUB SEVEN』は舞台やミュージカルのエンターテイメントを詰めに詰め込んだような作品です。キャスティングされた俳優陣は、普段大きな舞台で重要な役(敵役だったり、脇役ながら見せ場がある役だったり)を演じられています。(主役は過去に経験済み)色んな舞台やミュージカルを観に行っているうちに「あれ、この名前あの公演にもなかった?」と頻繁にお見かけする方々ばかりです。
 ですが、舞台俳優さんってテレビの露出が非常に少なく、大衆に知られている方はほんの一握り。『CLUB SEVEN』のキャストさんの名前を畏れ多くも出させていただきましたが、皆さんほとんど知らないと思います。そんな知らない俳優さんしか出ていない舞台を「面白いらしい」だけで観に行くのってすごく勇気が入ります。だから「観に行ってください!」とは言いません。

 ただ私がミュージカルを観るたびにどれだけ楽しんできたのか、聞いてください!!

 今後、もしかしたらまたレビュー書くかもしれませんので、その時はまた読んでくださいませ。



『ココロオドル』

Next