一定のリズムで体の中心に響く低音
何層にも音を重ねて目紛しく変わるコード
心地良く調整を重ねたハーモニー
天まで貫かんばかりの圧倒的なメロディ
君の音楽で世界が平和になることはないけど
君の音楽に出会えた私は幸せを噛み締めている
どうか君の奏でる音楽が
争いの火種や道具として使われませんように
『君の奏でる音楽』
ツバの広い麦わら帽子
眩しく反射する真っ白なワンピースは
腰まで伸びた髪と共に風に揺られて
手には大きくて四角いカゴバッグ
白い肌でも日焼けを気にせず
足元はサンダルか裸足か
彼女の立つ場所は
青い空に白い雲が浮かぶ
どこまでも広がる海に砂浜か
それとも
一面に満開のひまわり畑か
どこで見たか曖昧だけど
誰もが思い浮かべる夏の風物詩
『麦わら帽子』
始まったばかりはワクワクと
途中、長い道のりに飽き飽きと
ここらで一息下車してフラフラと
遊びすぎてウトウトと
そろそろ着くかもドキドキと
旅路が走馬灯になってウルウルと
終わりの地に一歩踏み出した時
僕は一体何者になれたのだろう
『終点』
そもそも上手くいった試しがないんだよね。
ペットボトルは毎回凹んで中身こぼすし。
説明書通りに組み立てても歪んで使えないし。
いっぱい練習しても日常会話が支離滅裂で噛むし。
清書は誤字脱字だらけだし。
塗ればはみ出て切れば曲がって貼れば歪むし。
掴んだ物は大抵一度は滑り落ちるし。
スロープは滑って転ぶし階段は躓くし。
くるりんぱはトゲトゲするし。
眉毛は左右対称に描けないし。
ムラだらけだから崩れやすいし綺麗に直せないし。
やっぱり世の中は器用な人向けに作られすぎ。
不器用な人間の不器用加減、舐めんじゃねえぞ。
『上手くいかなくたっていい』
両親に甘やかされて育ったんだと自覚したのは社会人になってからだった。
先日の仕事中、なんかの拍子で自炊するか否かの話題になり、実家暮らしの私は早々に「料理できない」と申し出た。特別珍しいわけではないはずで、案の定「そんな感じ」と返されて、以降は一人暮らしの自炊組が簡単なおつまみレシピを語り合っていた。なんだか居心地悪くて、でも無理矢理話題の中心へ入っていく勇気もなくて。曖昧に相槌を打ちながら作業する手を早めた。
社会人になって実家で暮らしていることが、年々言い出しにくい空気になってきた。新入社員だったり、まだ二十代の頃は収入が少なく、致し方ないと思われるのだけど。三十代以降はまだ独り立ちしてないのかと、口に出されないが目で訴えられているように感じる。
親がいつまで元気かわからない。いつまで私を子どもとして扱ってくれるのかわからない。元気な今のうちに一人暮らしを始めてしまった方がきっといい。一人で生きる能力は全くないのだけど、徐々に慣れていくしかない。
そう考えているのに、一人暮らしに踏み切れない私はとんだ甘ったれなのだろう。
『蝶よ花よ』