涙が止まらない。
これは君のせい。
刃物を持った私の手が君の背に突き刺さる。
君は声も出ずに伏せる。
もっともっとと君に突き刺す刃物。
未練なんてさらさらないのに止まらない涙。
誰かこれを止めてくれ。
(この後ハンバーグにして美味しくいただきました♪)
#涙の理由
「好きだ」
ポツリと出てしまっては後悔しても遅い。
君は目を丸くしている。その瞳はキラキラして光が反射しているようだった。
「えへへ、私も好きです。コーヒー」
次はこちらが目を丸くする番。あぁ、こんなに純粋無垢な人、世界中を探してもいないだろう。僕は目を細めた。
コーヒーが冷めないうちに、今度は君に届くように伝えよう。
「君のことが__」
#コーヒーが冷めないうちに
魔法はいつかとけてしまう。
何度もあなたに語りかけた灰被りの少女の話。
あなたを迎える日を待ち遠しく待っていた日々。
あなたに会えるならどんな苦痛も耐えきれた。
でも、魔法は一瞬にして解けてしまった。
時計の針が重なった頃、解けてしまった。
苦痛にも耐えたの。あなたに逢いたくて。
ただ、声を聞かせて欲しかった。
「よくあることよ。」とかけられる声。
現実が私を悲劇のヒロインにしてくれなかった。
#時計の針が重なって
ぽちゃん
どこかで水の音がした。
「どうしたの?」
そう言って翡翠の双眼がこちらを覗く。どこかで見た透明な美しさ。
(あぁ、思い出した)
その既視感は、あの日海に捨てたビー玉だった。
胸をこがれる思いで捨ててしまったあの恋心だった。
#夏の忘れ物を探して
朝、目が覚めると右側の温もりが消えていた。
心做しか空気も少し冷えている気がする。
ひんやりとした廊下をぺたぺた歩き、ドアノブに手をかける。
ドアを開くとそこには、トントンと一定に刻まれる音。
カーテンからこぼれる光がなんとも眩しく、
暖かな空気であった。
「おはよう」
私の心はそのテノールボイスに蕩けた。
#素足のままで