【懐かしく思う事】
「また今度な!」
手を振って走っていくお子様を見送ってから煙草に火をつける。人と触れ合う時間。尊いねー。もっと年齢関係なく触れ合ってた頃もあったが大人になっちまうとよく分からんおっさんと話すなんてしないんだろうな。最近話した大人なんて警察ぐらいか。最近、迷惑系の配信者がいるのでお気をつけてだったか。こういう時に俺には関係ないねー面してると絡まれるんだろう。ま、帰るとしますか。夕暮れってのはどうしてこうもノスタルジックな気分になるんだろねー。
【もう一つの物語】
そうだねぇ。物語ってのは一つじゃないという否定から入っちゃおうか。裏で起きてた事がもう一つ?そうだね。だけどさ、視点主がいればいるほど話ってのはあるもんよ。日常だって綴れば物語。ドラマがあればもう一つとは限らないんだよ。何が言いてぇのかって?そうねぇ、側にいる奴の話が面白いとは限らない。例えるなら…こんな顔半分を焼かれた奴の話は面白くないが野次馬がうろ覚えの記憶を繋ぎ合わせた話は愉快だったろ?元凶さん。記事に乗ってる。世間はそれを求めてたし、お前だってそう。死人の話はない筈だったんだわ。火事でした。怖かったです。で、仕舞いなんだわ。さて、一つの物語を終わらせようか。
【暗がりの中で】
こういう場所に出るんだよ。何が?って…。そろそろハロウィンだろ?いるんだよ本物が。え?素人がほざくな?お前が何知ってるんだよ。ん?普通に群衆に紛れてるに決まってるだろ?陰キャだっているだろ!賢くても無理って奴が…。
「うるっさ…何?うわ人間だ。トリック何とか。死にたくなかったらとっとと失せろ」
いたー!
「はしゃぐな。見られたからにはマジでぶっこ…。もしもし?はん?ほん?ほへー?へいへい。(ピッ)失せろ。相棒がお前ら殺さずに何とかしてくれるってよ。もう一度言う、失せろ」
す、すみませんでしたー!
「小物が。…陰キャっての当てるなよ。マジでぶっ殺す」
ー
その後、記憶をなくした二人組が見つかったらしい。警察は酔いによる一時的なものだとして呆れながら保護したそうな。
【紅茶の香り】
「お茶頂いてます。仕事はどうしたかって?サ、サボっていません!僕はご厚意に甘えているだけです。一般の方は労ってくださる事が多いので」
祖母のティータイムに付き合うと長いぞと目の前のサイバーチックな衣装の女郵便屋に囁いた。他の郵便屋という者を見た事をないのだか区画の問題なのだろうかね。それに一般じゃない輩も相手にしているのか。深くは聞きたくはないが。
「クッキー美味しいです。おばあ様は天才的ですね」
祖母の近くには女の子がいない。息子は俺と兄。孫も三人いるが全員男。俺は大昔に妻に先立たれた。だから、毎日来てくれる女郵便屋が可愛らしくて仕方無いのだろう。郵便屋が来る理由も兄からの手紙を届ける為。義姉の療養の付き添いで遠くにいる。
「うちは女の子が皆、先立つ家系なの。私は夫の二番目の妻だから許されているのかも知れないけれど。ごめんなさいね。こんな老体の寂しさを埋める為だけに付き合ってくれて」
「いえいえ、お気になさらず。僕は僕を良くしてくれる人の味方です」
存外大人しいかと思ったら図太いな。と思った。そんな性格だから生き残れているのかもとも思えた。
「あ、そろそろ行きます。明日もきっとお手紙来ますよ。では、失礼します」
俺達に手を振ってから一跳躍で姿が消える。どんな超技術使ってるんだ。凄いもんだね。郵便屋。この前は大岩を砕いたともいうし。まさか、人間じゃないとかないよな?そんな考えは祖母が幸せそうにしているうちに封印した。
【愛言葉】
こんな時だけ恋人面ですか。そんなに愛を囁いて欲しいですか。お断りですね。常に長袖着てないといけない身体にしておいて。顔だけは傷付けずに見えない所に。やり口が汚いんですよね。普段は頭悪い癖に。無駄な所で頭使わないで普段の生活に頭使って欲しいものです。依存しないでくださいってお話です。ご理解いただけてますか?