【カレンダー】
僕は日付を斜線で消していく友人が苦手だ。友人は今日が何日か分かりやすいだろ?と言ってくるが僕は年月が減っていく感覚が嫌で嫌で仕方がない。ナイーブだなお前と言われるがそれでいい。怖いものは怖いんだ。昨日まで6月かと思ってたらもう9月だし。友人は笑う。分かる分かる、水曜日だと思ったら金曜日とかあるよなって。時間感覚のズレというのは恐ろしい。
【喪失感】
あーあ。それ食べちゃったの。いーけないんだ。なに泣いてるの?自業自得じゃない。メロンパン…じゃないの。全く。買いになんて行ってあげないよ。じゃ、私はプリン買ってくるから。え?そのメロンパンと買った店同じだろ?まあ、そうだけど。近いだけだし。何?たかろうとしてる?やーだ!自分で何とかしてよね!
【世界に一つだけ】
僕さ、人間大好きなんだよね。ほざくな悪魔?獲物としか思ってないクセにって?まあ、聞いてよ。人間は似た境遇というものはあるけれど完璧に何もかもがおんなじって事はないだろう?容姿、好き嫌い、思考、信念。全てが唯一無二。その個性が僕は大好き。そんな子達に甘い言葉をかけてどうなるか。嫌悪するも救いととってくれるも全部が全部いいんだよね。飽きない。だから、僕は人間だーいすき。君のその苦虫を噛み潰した顔も好きだよ。
【胸の鼓動】
走る。走る。これが日課。一秒でも早いあの世界に行きたいから。いつも通りの日課をこなすと雨が降ってきた。
「あぁ良かった。いつもより少しだけ早い時間に走っておいて」
まだ心臓は早く鼓動をしているが濡れずにすんだという安堵で心は穏やかだった
【踊るように】
目の前で繰り広げされる殺戮。渦中の男は華麗なナイフ捌きで次々と現れる人間達を肉塊に変えていった。30秒後、ファンファーレ鳴り響く。
「Noob乙でーす」
チャットに書き込まれた余裕たっぷりの嘲り。数多の屍が消え去り、天からはきらびやかな紙吹雪が舞っていた。表彰台にてエモートを披露する男はこのゲームの頂点に君臨する男SAMnoodle。HNはふざけたものだが実力は本物。重火器がものを言わすこの場所にてネタ武器、縛り武器等といわれるナイフ一本だけで勝利をもぎ取って行くのだから。これだけの実力者だがメディアには一切姿を表さない謎の存在。まあ、ネットの存在をリアルに引き込むのはナンセンスだ。
「おっつおっつ。またどこかで会おうなNoob共」
そう言って彼はゲームから退出していった。生ける伝説、SAMnoodle。ライト勢でしかない僕でも同じチームとしてゲームが出来て、出会えて良かったと心から思った。