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10/24/2024, 9:05:47 AM

お題…どこまでも続く青い空

辺りを燦々と照らす太陽だ。
彼と日々を過ごしていくうちに、そう思った。燃えるような闘志で戦い、まっすぐな精神を持ち、どこまでも実直。そんな彼のことを私は、率直に言うと好いている。私だけを特別だと想ってほしいし私のことをずっと見ていてほしい。でも、彼は私のような人間が好きではない、とも思う。うじうじしていて思ったことも言えず考え込む性格の私と、竹を割ったような性格の彼との相性が良いとは到底思えないし、それに、彼にはいつも前を向いていてほしいのだ。私の事なんか考えてないで、まっすぐ歩みを進めてほしい。私が好きな彼は太陽のような彼だから、もし思いを伝えてしまって、彼が曇ってしまったら。私が大好きな彼が見られなくなってしまうことが震えるほど怖いのだ。だからこの思いは封じ込める。

そう決めたのに、
今彼は、私が恋した射抜くような瞳で私のことを見つめている。ただまっすぐに。
「何故俺を避ける」「勘違いなんじゃないかな?」
拙い笑顔でそう言うも上手く笑えている気がしない。そう思うやいなや彼に力強く肩を掴まれ視線がかち合う。

「分からないから知りたいだけなんだ、言葉にしてくれ!」
請うような、願うような顔でそう告げられては、私は、

「好きなの」
時が止まる。大包平は黙り込んでいる。
静寂に耐えられず私はまくし立てるように言葉を続ける。
「あなたのことがずっと前から。でもあなたは太陽だから、私にとっての。どこまでもまっすぐて、燦々と周囲を照らして、決してその光を絶やすことのない太陽なの。そんなあなたの陰りにだけはなりたくないの!」
言ってしまった。絶対に言わないと心に決めていたのに。絶望にも近い感情を覚える。

しかし予想に反して、顔から色を失った私の肩を掴んだままの彼は、何かを決したような顔で言う。
「俺はずっと思っていた。主は広く澄み渡る空のようだと。」

意外すぎる答えにポカンとした顔の私に彼は続ける。
「嬉しいことがあった時、お前は俺をにこやかに受け入れてくれる。戦で思うように立ち回れなかった時、お前は何も言わずただ傍にいてくれる。ひたすらそこにあって、全てを受け入れてくれる主は、どんな日でもそこにあり世界の動きを受容する、泰然と広がる空のようだと。」

こんな私が、空? 頭に疑問符が浮かんだままの私にあたたかい笑顔が降ってくる。
あぁ、その顔、そのあたたかさが好きなのだ。

「それに、俺が太陽だとして、そうやすやすと俺の光が曇ると思っているのか?俺はいつ何時も輝き続ける美の結晶だぞ!俺は、全てを覆い隠すような暗闇の中でもなお光り続けると、そう誓う。」

強くも優しい言葉で私の暗い思い込みを否定して私の感情を肯定してくれる。そんな彼の言葉に一時柔らかい気持ちになるも、今の状況を思い出し慌てて言う。

「でも、私こんなだし、すぐ考え込んでうじうじするし、まっすぐなあなたとは」
「考え込む性格は主が思慮深く人のことを思いやれるという証拠であって、美点にこそなれど欠点ではない。」

今度はこちらが黙り込む番だ。この性格故にあった嫌なことや悩みが嘘のように晴れていく。
やっぱり
「太陽みたい」
思わず顔がほころぶ。
「何を笑っているんだ!俺は真面目に…」
「分かっているよ、ありがとう。」

向き直って改めて言う。
「私は、大包平のことが好きです。1番愛しています。」
「あぁ、俺も、主のことを一等好いている。」

今までの思い悩みが笑えるほどのハッピーエンドじゃないか。嬉しくて気が抜けて私はその場にへたり込む。

大包平はしゃがみこみ視線を私に合わせる。
そしてフッと微笑んで、彼は私に告げる。
「それに、太陽には空が必要だ。空あってこその太陽なのだからな。互いに欠けてはならない。」
そう言って以前と変わらない、灼けてしまう程の眩しい笑顔をこちらに向けるのだ。