君が見た夢
「園崎さん、また居眠りしてるんですか?」
「…ん、ああ。」
まだぼんやりしている返事を返すクラスメイト。
2年生の冬、忘れられない思い出を共に体験した真面目な生徒会長「園崎燈右」は最近よく居眠りをしている。
「次は移動教室ですよ。もう皆さん行ってしまいましたよ?」
「うん、わかってる。」
そう言いながら、ようやく彼は次の授業の準備を始めた。
…最近夢見が悪いのだろうか。心配で何があったのか聞いても、君は何も答えてくれなかった。
きっと、私がまだ『春崎美南』であるままだからだろうか。
私は記憶を失った。この名前は、ぼんやりとした記憶の霧の中で見つけただけ。
だから…本当の名前はきっとこれじゃない。確証は無いけれど、うっすらとそんな感じがしている。
だって、君を見ていると心がザワつくから。
君と私は、とても似ているから。
…ねえ、燈右。
君は今、何を見て、何を考えているの?
『クトゥルフ神話-記憶を探し求める『私』の話』
明日への光
甘く、幸せを象徴する砂糖の香り。
「誕生日おめでとう、光。」
「いつの間にか誕生日ケーキも大きくなったわね。」
両親は切り分けた1人分のケーキを私の前に差し出す。
「さあ、ケーキを食べたらプレゼントを買いに行こうか。何がいい?」
「ちょっとお父さん、なんにもないんじゃ光も選べないでしょう?」
「それもそうだな。じゃあ早く食べようか。」
ほほ笑みかける両親に、私も口の端を上げる。
幸せで、平和な、ただの日常。
たった1人分の誕生日ケーキ。
私はそれを、お姉ちゃんに代わって食べ始めた。
両親は別に子供が欲しかったわけじゃなかった。愛してはあげれる、そんな淡白な人たちだ。そんな両親の元に双子に生まれた私たちは、「2人とも育てるのは面倒。」とお姉ちゃんだけを自分たちの娘ということにした。
「楠木久墨」それが私の本当の名前。
両親は私を殺風景な暗い部屋に押し込んでお姉ちゃんだけを愛した。
私の大嫌いで、妬ましくて、大好きなお姉ちゃんは今「楠木久墨」として部屋で冷たくなっているかも知れない。
甘い砂糖の幸せの味は、いつまでも私を裏切ることなんてないだろう。
―――――――――――――――
…あれ?
私は何をしていたんだっけ。
荒廃した広い外、暗く淀んだ空は灰色だ。
そうだ、私たちはボロボロの工場からお外に出てきたところなんだった!
「ねぇ「フェティチェ」、お外の世界はどう?」
肩に乗る首だけの私の「姉妹」。ほかの自立してる「姉妹」たちもお外に出れて嬉しそうだ!
確か私の名前は「フェティチェ」。大切な私の「姉妹」の「フェティチェ」とはずっと仲良しで、これからも離れ離れになることは無いんだったね。
「ふふ、楽しみだね。これから色んな場所に行こうか。ねぇ何が見たい?私はね…」
『ネクロニカ-フェティチェの姿に似た少女の話』