【この道の先に】
アフリカのルーシーから始まった人類の旅
道無き道をひたすら進む 北へ
倒れ朽ちても、なお新しい命が北を目指す
気が遠くなるくらい果てしない時間の末に
やがて道ができる
遊牧民 交易 シルクロード 戦争も
人の歴史は道と共に広がっていった
まるで血管のように張り巡らされた道
それを利用している生き物は人間だけ
空をみるとただひたすらに広く
地上はこんなにも狭く
短時間で移動できる
それを人は便利と言う
道がない世界を想像してみる
この道の先に待っているのが混沌ならば
不便でもかまわない
道の無い世界で
わたしは獣道を迷いたい
【日差し】
焼けつくような強烈な熱が肌を焼く
ひりひりと波の中
はしゃいで疲れて砂の上
目の前を蟹が横切る
生きている!
そう、わたしたちは生きているのだ
確認するように今を全力であそぶ
【窓越しに見えるのは】
ガラスの向こうに見えるは夢
朝の光と共に
霧のように消えてしまう
窓を開けて向こう側へ行けたなら
なにかが少しは変わるのだろうか
そんなことを思いながら
わたしは未だこちら側から動けずにいる
雲にかかる虹
虫取網を片手に虫を探す子供たち
雨上がりの雫にキラキラ光る向日葵
走り回り楽しげに吠える子犬
これはいつか見た夢
いつか見た風景
本当にあった出来事
窓を開けて
両手を広げて飛び込めば
きっと行ける
あの素晴らしい世界へ
だけど
わたしは未だここから動けずにいる
それは物語の始まり
糸と糸とをたぐっていくと
やがて抗えぬ縁となって
繋がっていく
その糸を切らぬ限り
ところで、今を生きる
わたしの糸はどうだろう
例えばそれを満員電車で想像してみる
絡まりあった赤い糸、縄
身動きとれない
あまりにも人が多すぎる
からまった糸は引きちぎられて
人が多い現代の方が
赤い糸をたどれない
逆説的な皮肉
【赤い糸】
乾いた地面に蟻の行列
空には大きな入道雲
空気が湿ってきた
もうすぐ、雨がふる
【入道雲】