「傘の中の秘密」
大雨の休日に部活があった。あまりにも雨がすごくて、他の部活は誰もやっていないのになんで自分の部活だけやるんだろうって、少し嫌気がさしていた。でも帰る時、あなたが「傘持ってないの?一緒に帰る?」って言ってくれた。びしょびしょじゃんってタオルを貸してくれた。雨に濡れた前髪を拭いたタオルは、あなたの香りがした。肩を寄せ合って話しながら帰ったとき、傘に当たる雨は優しい音をしていた。それだけでその日はとてもいい日だった。結局風邪は引いちゃったけど。
この恋心は、あの日の傘の中だけの秘密。
「雨上がり」
私は雨が好きだ。窓を開けるとそっと流れ込んでくる優しい音、少し湿った土の匂い。それらはいつも私の心を落ち着かせてくれる。家の中でそっと眺めるのも好きだけど、傘を差して外へ出るのも悪くない。お気に入りのオオオニハシの形をした傘。雨の中翼を広げる。それでも、すぐに雨は止んでしまって、私のオオオニハシは光の雨を一身に受け止めていた。
「勝ち負けなんて」
ある期末考査の日、あなたと勝負をすることにした。こんなこと言っちゃ悪いけど、私の方が賢いから、あなたが一教科でも私より点数が高ければあなたの勝ち。
結果はあなたの勝ちだった。美術の点数だけ、あなたの方が点数が少し高くて、だから私の負け。本当に少しの差だったから悔しくて、でもあなたが嬉しそうにしてるのが可愛くて。だから勝ち負けなんてどうでも良かったの。あなたの笑顔を見るためなら、何回だって負けてあげる。
「渡り鳥」
あなたは、渡り鳥。笑顔で私のところに来たと思ったら、すぐに他の人のところへ行ってしまう。自由気ままに、渡り歩く。だからいつも、私は追いかける。目で追ってしまう。
バードウォッチングも悪くない。
「さらさら」
私はあなたが文字を書いている姿が好きだ。さらさらと美しい文字を、文章を、物語を紡いでいく。筆で書いても、万年筆で書いても、鉛筆で書いても。全てに物語が詰まっている。きっと私は一の一文字でもあなたの文字を見分けられる。
そんなあなたが私のためだけに文字を紡ぐ。今日は私も一緒に。フェンスを乗り越えて、靴を脱いで、手紙を置いて、大空へ飛び立つために。