朝起きると不自然な倦怠感に襲われた
まさかとは思ったが体温を測るといつもより6℃高い
いわゆる微熱、というものだ
それでも自分を奮い立たせて起き上がる
あわよくば休めたら、と思ったがそんなことは通用しないと分かりきっているので仕方なく学校の準備をする
でも学校は嫌いでは無い
友達や先生、クラスメート
特に…
「おはよう!!今日も一日頑張ろう!」
話しかけてくれる君の存在がいるから
君がいるから頑張れる
君のことを見れたらそれでいい
君のおかげで微熱の事などすっかり忘れられるくらいに。
寒い寒い、とはしゃいでいたあの冬。
セーターを持ってくれば良かった、と笑いながら上着の裾を限界まで引き上げて中に手を押し込む私。
僕がいつでも君のセーターになってあげるのに、と君が耳を赤くしながら冗談ぽく言ったあの日。
君のことが好きでしょうがなかったのに
君のことを愛してやまなかったのに
君がいないと生きていけなかったのに
いつしか私の隣はぽっかりと穴が空いたままだ。
それが埋め合わされることもなく、無くなることもない。
ねえ、寒いよ
セーター持ってきてないんだ、
だから暖めにきてよ
[セーター]
今まで来たことも無い道を辿って
全てにさよならをしようと思った
崖を登った時にはもう何も考えていなかった
崖から見える景色は
これまで見た事ないくらい壮大で
そしてこの世の全てを映し出してくれる
今まで感じた苦しみも悲しみも虚しさも
全部全部忘れ去るような景色だった
家や学校や友達よりも
ずっとずっと心の安らぎを感じられる景色だった
最後に何かを遺しておこうと思ったがそんなものはなかったので 「誰からにも愛されてなかったんだな」 と他人事のように思った
深呼吸をして空を見つめる
今までの出来事全部
これから起きるはずだった未来全部
私は背負って
思いっきり
崖から飛び降りた
どんな日よりも素敵で
どんな日よりも輝いていた
ゆっくりと目を閉じながら
私は
落ちていった
「落ちていく」
世は今クリスマスシーズンで大騒ぎ
ケーキだとか、恋人だとか
でも私には無縁というわけではなかった
私には今恋人がいる
でも予想以上にカップルではなくて夫婦が多く
カップルに見えて薬指には結婚指輪
大したものだ
私達が遅れているのか
20代前半で付き合った私達。
結婚、ということも視野に考えた方がいいのか
夫婦は憧れる存在だし
結婚するならこの人が良かった
でも相手は?
私と違って結婚など考えていない場合は?
私たちの間には少し壁のようなものがあった。
それは最初からではなくて
日に日に壁は厚くなっていくような気がする
バイトだから会えないとか、スマホを見る時間が多かったりとか、
私のことなどもうあまり考えていないのだろうか
考え続けていたら不意に肩を叩かれ
振り返ると君がいた
優しい眼差しでこちらを見つめる君
ああ、やっぱり私は好きなんだな、と想う
君のことが好きでしょうがない
四六時中君のことを考えているのだから。
君にとってはただの恋人でしかないのか。
私には分からないけど
この日をずっと忘れないでいる最高の日にしようと思う
時が経っても忘れないような
君との記念日にしよう。
[夫婦]
もう深夜だ
今日も寝つけない
明日になったらまた怒られる
自分でも分からない
明日になったらまた叩かれる
前の私だったら-。
今までの私だったら
どうしていたのだろう
無邪気に笑う姿が脳裏に焼き付いて離れない
なんでこうなってしまったんだろう
いつの日から?
君の姿も見かけなくなった
なんで?
私は
どうすればいいの?
「どうすればいいの?」