一言だけの返事は彼女が言うとなんだか
酷くつまらないことのように感じてしまって
だから私はなんでもないよと笑うのだ
ぶり返す今日も季節風邪のようにあなた由来の病が。
風邪
それは手が届く星の海
偽物の星が妙にギラついて
ブルーライトの電子を泳ぐ
私たちみたいね
ほんものになんてなれやしない
光るならどっちだっていいよ
イルミネーションとイミテーション
ほらあまり違いなんてないでしょ
雪と一緒に星が落ちてくるのよ
偽物か本物かなんてどっちでも良いと思う。ブランド品によく似た商品も似てるだけなら別に構わないし、本物が食べられなくても似てるものを食べられたら満足だし、結局、本物というのは拘りの強い人間が扱うものです。本当の作家になれなくても言葉を綴れるだけで楽しいし、本物の星は手に入らなくていいから、たくさんの星が手の届くところで光っているだけでなんだか嬉しいんです。嘘を楽しみたい。
イルミネーション
心のがらんどうを埋めたくて、ただ満たされたくて生きていたら空っぽの部屋で空っぽのまま生きている。すりガラスの窓を開けることもなく何も無いだけの空間で同じ空気を吸っては吐いている。私以外の何者も立ち入れない場所で私だけが私を構成していて、中身のないまま外側だけが取り繕われてただ命を消費し続けていく。命を切り分けて大事に大事に食べていって、私が私を食べ尽くした時もうそこには外側の殼すらないんじゃないか。誰かのために生きられたらどんなに素敵なことだろう。同じだけの幸福じゃ満たされてくれないからもっと次を求めて傲慢で生きている。穴ボコだらけで乾いて仕方ないから、だれか、どうか。
抱きしめて愛を注いで心を救って生きてる証をくれよ
気がついたら何をしていたのかわからなくなっています。記憶の引き出しに限界を感じていて、全能感が底をついて、眠れないほど溢れ出していた新たな想像の欠如に恐怖しています。過去を食い潰してもう生み出せない。生産的でいられない。何にもできない人間になってしまう。空っぽの現実を見たくないからネットに縋ってどこかに生きてる証を求めてしまう。そうでなければ、どこにも私が今まで生きていた証拠なんてないから。透明人間だ。息してるだけの幽霊だ。愛が足りない。
愛を注いで
私達の間にある全ての事象が煩わしい
心に触れてみたかった
頭の中があなたでいっぱいになって
ずっと一緒にいたくて
近くにいると幸せで
そういう気持ちが私にもあったらよかった
そしてわたしを欠陥品だと思って
ちゃんとした人間にしたいと思って
どんなに試行錯誤しても
最初から存在しない部品は治せないわけで
わたしはここにいて
あなたと違う愛を知ってる
抱きしめてよ
受け入れ難い異質を肉の殻で覆ってる
心と心で話したら何もかもを話せるわけじゃない
けれどあなたとわたしの間にある全てが煩わしくて。
同じだけの気持ちを持ち合わせていない時の孤独感
心と心
何でもないフリできるほど大人でもなかったよ
ねえつまらない人間になってしまったね
刈った草や雨上がりの土の匂いを忘れて
裸足で踏み入った泥の温もりも忘れて
何もかもを過去に置き去りにしてきた
作り笑いとか心にも無い賛辞だとか
決まった返事や決まった予定だとか
終わりまで見え透いたような人生なんかうんざりだ
大人のフリして大人になんて成りきれない
知らんぷりしても何でもないフリしきれない
こんなつもりで生まれたわけじゃないのに
ねえつまらない人間になってしまったんだよ
文明を着飾るあなたは徐々にブルーライトに沈んでゆく
スイッチひとつで消えてしまううつくしさ
何でもないフリ