私の当たり前は、私だけの当たり前だ。
時々自分に、そう言い聞かせる。
近しい人に押し付けないように。期待しすぎないように。
時にそれは難しく、一人で勝手に失望して、でも「あなたはあなたで、私は私。」と、割り切るのは寂しくて、心の奥底では理解して欲しいと願っている事に気づく。
どこまで行っても平行線だ。
でも、二本の線は並んで一緒にどこまでも。これが程良い距離なのかと、今日もなんとなく腑に落ちる。
にぎやかな街の明かりに慣れていた。
いつも行く、あの駅もこの駅も、終電までは常に明るく、夜道が怖いと思った事なんてなかった。
けれど今は、ひと度夜になると外は暗く、どうしても夜歩きしなければならない時など、夜の深さに慄いてしまう。
だけど安全な窓から眺めるこの街の明かりは、ささやかながら暖かく、今日も人々の静かな夜を照らしている。
七夕の日には、何か特別な事をするのだろうか。
数日前から、七夕の日の夕食は、何か七夕らしい物を作ろうかとぼんやり考えていたものの、時間になっても妙案が思い浮かばず、結局いつもと変わらない夕食となった。
イベント好きの家族が特別な何かをしたいと言うので、二人で外に出て、1つだけ見えた赤い星に、短い時間お祈りをした。
夏の夜の匂いがする風が心地よい、七夕の夜に。
繰り返し思い出すのは、
幼稚園の頃、お友達に見せて貰ったくまちゃんのかわいい消しゴムを弄んでいて、手足の付け根がひび割れてしまったのに謝ることができなかった日のこと。
小学生の頃、幼馴染と共に膨大な時間を過ごした、他愛もない放課後のこと。
複雑になった相手の気持ちも、相手の事情も、場にあった振る舞いも、何もかもがあやふやでよくわからないまま、それでも同じ時を刹那的に共有した若かった日々のこと。
会えなくなった今でも、繰り返し思い出す。
星空を見上げて、その先に続いている故郷を想う。
星が流れるのを見れば、私もあの星に乗って故郷までひとっ飛びに行けたらいいのに。と思う。
邪気のない顔で、ニコニコと笑いながら、漫画みたいな流れ星に跨がって帰るのだ。