喜びも
悲しみも
感謝も
悔恨も

また
のみこんでしまう

ヒトは
言葉を手に入れたのに
その操り方を
未だ識らない


…言葉にならないもの

目をとじても消えない
輝きの中にいるのは
誰なのか

足元も見えない
のばした手がつかむのは
何なのか

憧れと畏れと
癒しと不安と

見つめようとすればするほど
つかめない光源


…眩しくて

太陽が沈んだら
南へと歩き出す

加速度をぐんぐん上げて
やがて 光の粒になる

纏わりつく湿度を振りはらい

五百五十五年前の
赤く燃える輝きをめざす

過去も未来も
置き去りにして

蠍の心臓に向かって


…星を追いかけて

手足いっぱい広げ
夏の風をつかまえて
ふわふわと舞い上がる

草の匂い
雨上がりの土の匂い

自転車の横をすりぬけ
線路をまたぎ

灼けたアスファルトをかすめて
また舞い上がる

風にまかせて…

ケセランパサラン


…飛べ

いつもと同じ時間に起きる
ミルクたっぷりのカフェオーレを飲む

お湯を沸かし
朝食を並べて

洗濯を干す
今日は曇りだから
乾きにくいかな

家族を起こす
テレビの星座占いは半分当たる

いってきます
いってらっしゃい

昨日と同じように始まる
昨日とはちがう一日


…special day